劇場公開日 1967年10月4日

「つくり手の意気込みも感じられる」戦艦ポチョムキン talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0つくり手の意気込みも感じられる

2023年12月8日
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鑑賞方法:試写会

もちろん評論子自身、歴史問題に詳しいわけではありませんけれども。
戦艦ポチョムキン号艦上での乗組員の叛乱と、引き続くオデッサ階段でのロシア政府軍による蜂起民衆の虐殺事件という、ロシア革命の発端となったとされている事件をを描く一本とのことです。本作は。

不衛生な食材(腐敗しかかった肉)が乗組員の叛乱の契機となったことは、評論子にも容易に納得ができました。
航海中でも非番のときにはネット配信で映画を楽しむことのできる令和のこの世の中とは違い、当時の航海中の楽しみは食事くらいなもの。
その食材が問題とあれば、乗組員の不満が爆発することに、何の不思議も無かろうと思うからです。

艦上では乗組員の蜂起に対抗できるのは、員数の限られた士官のみ。
艦上では、蜂起部隊は容易に実権を掌握することができたことでしょう。
しかし、武力を容易に補充して投入できる陸(おか=陸上)では、そうは問屋が卸さなかったようで、オデッサ階段での民衆の蜂起は、容易に政府軍に鎮圧されてしまう―。
しかし、その悲劇が、民衆の心に火を点け、かえって革命の、いわば「起爆剤」となってしまったことも、容易に推察されるところです。

「無声映画」というと、コマとコマとの間にセリフのカットが入る、あのスタイルを思い起こしがちですけれども。
本作は音楽が効果的に使われて、いわゆるモンタージュ効果(?)で、ブツブツ切られることなくストーリーを追える作品に仕上がっていたと思います。

佳作の評価に充分に値するものと思います。評価子は。

(追記)
もちろん、この時代の製作ですから、モノクロ映画なのですけれども。
しかし、ラストシーン近くの赤旗が風に靡(なび)くシーンでは、旗に細工がしてあり、赤色に着色されています。
この頃、もちろんCGなどで着色の技術はなかったはずですから、おそらくは、一コマ一コマ手作業で、フイルムに細工したものと思われます(風に靡(なび)く旗と着色とが重ならず、少しくズレている様子が見て取れる)。
その根気強さに、製作者の本作に懸ける「意気込み」「思い入れ」を感じたのは、独り評論子だけではなかったかと思います。

(追々記)
評論子の住む近隣の市で、新しく映画サークルができるということで開かれた、その「旗揚げ上映会」で鑑賞した作品になります。
映画は、もちろん観ることも大事ですけれども、それに劣らず、自分なりの評を聞かせ合うことも大事と思います。
(その意味では、この映画COMのようなサイトも有用と、評論子は思う。)
旗揚げ上映に本作を選んだことに敬意を表するとともに、生まれたてホヤホヤのこのサークルが、会員諸氏の熱意で、長く活動することを衷心から祈念いたします。

talkie