劇場公開日 1967年12月16日

「例えるなら最盛期の「新春かくし芸大会」」007 カジノ・ロワイヤル(1967) pipiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0例えるなら最盛期の「新春かくし芸大会」

2022年1月2日
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鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

寝られる

「俳優陣の演技力が凄い」「セットに凄くお金をかけている」「細かな点に光るものは非常に多い」「好意的に見たい、好感度は高いと感じさせる」
それなのに「笑えない」「ストーリーの繋がりが悪い」「話の脈絡が追いにくい」
結果的に「視聴が苦痛である」
なんだか「多種多様な山ほどの高級食材にBBQソースをぶっかけてハンバーガーにしてしまったみたいな映画」

というのが、一緒に鑑賞した息子(18歳)の感想である。なかなか正鵠を得ていると思う。
その年齢では、出演陣の豪華さがわかるはずもないし、かくいう私も彼らを見て「見慣れた」と思える感覚は無い。
オーソン・ウェルズを身近に感じるようになったのは幼少期に毎日見ていたピンポンパンかポンキッキのCM帯で毎日のようにイングリッシュ・アドベンチャー「追跡」の広告が流れたからだ。
名前を聞けば「ああ!あの名作の!」とは思うが「懐かしい〜」というほどの思いはない。

ざっと出演者を羅列すると、
デヴィッド・ニーブン(80日間世界一周、ナバロンの要塞、嵐が丘)
オーソン・ウェルズ(第三の男)(監督作・市民ケーン、マクベス、オセロ)
ピーター・セラーズ(ピンクパンサーシリーズ)
ウッディ・アレン(アニーホール、ミッドナイト・イン・パリ)
ウィリアム・ホールデン(戦場にかける橋、タワーリングインフェルノ)
シャルル・ボワイエ(裏街・ガス燈)
ジョン・ヒューストン(監督作・白鯨、マルタの鷹)
ウルスラ・アンドレイ(007第1作ドクターノウのボンドガール)
デボラ・カー(王様と私)

なんとまぁ、錚々たるメンバーか!
こんな大物達が全力でパロディやコントを繰り広げているので「彼ら」をよく見知っている世代にとっては、ただそれだけで笑いが取れるのだろう。
シリアス派・正統派大物俳優、或いは新進気鋭の喜劇役者が、まさかと思うようなバラエティに出演し、身体を張ってコントを演じてくれる。
この作品の「笑い」はそういうところにあるのだろうから「俳優陣」を充分に知らなければ笑えないのだ。
1967年の時点ですでにビッグスターだったメンバーだ。現在、本当の意味で純粋に笑えるのは後期高齢者世代の方々だけなのだな。
まぁ、1980年前後の「オールスター新春かくし芸大会」の雰囲気がわかる方は、そーゆーものだ、と思って頂けばよろしいんじゃないかと。

本当は、まだ「小説007」が無名だった頃、007第1作目「カジノロワイヤル」の映画版権を1番最初に取得したのはこちらなのだ。
しかし、映画化を試みるが主演探しに失敗。
そうこうしているうちにイオンプロの007が世界的大ヒット。そこでイオンプロに「カジノロワイヤル」の合作を持ちかけるも、交渉決裂。
それならばと、ショーン・コネリーに直接交渉したが、コネリーは「半年に1度はボンド以外の役を演じたい」と、タイミングが合わずこれまた失敗に終わる。

数々の失敗に落胆したハリウッドの重鎮フェルドマンは、いっそイオンプロのボンドシリーズを思いっきり茶化したパロディ映画を作ることにした。イオンプロには出来ないであろう「ハリウッドの超オールスター達を起用」して・・・
音楽までもバート・バカラック(「明日に向かって撃て」などヒット曲多数)を起用と、実に豪華で素晴らしい。
これでストーリーさえ!脚本さえしっかりしていれば、番外編として007ファンの記憶に残る1作品となっただろうになぁ、、、。

残念ながら「おふざけを名優達が演じるギャップ」&「コネリー・ボンド1〜4作への皮肉めいたパロディ」以外に、作品単体としての優れた点は無い。最近の言葉で言うなら「名優達の無駄遣い」だ。
ただ、出演陣が「非常に楽しそう」であった事は間違いない。ハリウッドスター達が全力で楽しみ、それを観る観客達も全力で笑っていたのならば、その時代に存在する価値はあったのだろう。

映画史料の一つとして観たい、という方以外にはお勧め出来ないが、ある意味「貴重な作品」である事は間違いところである。007パロディ作品としてオースティンパワーズやキングスマンにも何らかの示唆は与えているものと思われる。

pipi
近大さんのコメント
2022年3月9日

コメントありがとうございます。

遂に見ました。
まあ…、ある意味貴重な作品でしたかね(^^;

近大