劇場公開日 1997年12月13日

「登山家が出会ったチベット仏教のダライ・ラマとの交流を美しく描いた歴史の一編」セブン・イヤーズ・イン・チベット Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0登山家が出会ったチベット仏教のダライ・ラマとの交流を美しく描いた歴史の一編

2020年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

「愛人/ラマン」以来のジャン=ジャック・アノー監督作品。この人の演出は技巧的に特に優れたキレはないものの、正直でスマートなカメラワークの安心感がある。オーストリアの登山家ハインリヒ・ハラーが経験したダライ・マラ14世との貴重な交流を原作にしたヒューマニズム映画であり、中国共産党の人民解放軍によるチベット弾圧が扱われている点でも価値が高いメッセージ映画でもある。第二次世界大戦の激動の歴史に埋もれた一人の登山家の実体験の重みが、まず興味深い。このハラーをブラッド・ピットが演じているも、インドで捕虜になり脱獄しチベットまで逃げ延びたのだから、実際のハラーは自己中心的で一匹オオカミ的な性格であったと思われる。そんなアウトローの生き方をしていた人物だからこそ、ダライ・ラマとチベット仏教に自然と感化されて人として変化せざるを得なかったのではないかと想像する。ピットの演技もアノーの演出も、その変化を表現しきれたかと言うと疑問も残る。但し、デビッド・シューリスの演技が波長の合った共演を見せていて救われている。前半のピットとシューリスの登山シーンのスリリングな展開がいいし、二人の価値観の違いも会話に生きている。後半の、シューリスの腕時計をクリスマス・プレゼントにして返すシーンもいい。そして、ダライ・ラマ14世が侵略してきた人民解放軍の高官に語る台詞が素晴らしい。ここに、アノー監督の制作意図が凝縮されている。そして何より山岳地帯の風景描写の素晴らしさに心洗われる一編だった。
  1998年 8月10日

共産国家の中華人民共和国からボイコットを受けたという事実は、もっと世間に知らしめる必要があるだろう。21世紀のジェノサイド問題に対して無関心ではいられない。事実は事実として映画に表現した果敢さは高く評価したいと思う。

Gustav
talismanさんのコメント
2021年5月4日

殆ど内容を忘れていました。再度、見たいと思わせて頂きました。レビュー、ありがとうございます。

talisman