進め龍騎兵

解説

「海賊ブラッド」と同じくエロール・フリンとオリヴィア・デ・ハヴィランドが主演する映画で、テニソンの詩に取材してマイレル・ジャコピーが書き卸し、「EP一号応答なし」のローランド・レイと協力して自ら脚色し、「海賊ブラッド」「黒地獄」のマイケル・カーティズが監督に当たっている。助演は英国から来たパトリック・ノウルズ、「海賊ブラッド」のヘンリー・スチブンスン、「丘の一本松」のナイジェル・ブルース、「白衣の天使」のドナルド・クリスプ、「ハリウッド大通り」のC・ヘンリー・ゴードン、「噫初恋」のスプリング・バイントン、「モヒカン族の最後(1936)」のロバート・バラット、「過去から来た男」のデイヴィッド・ニーヴン、「虚栄の市(1935)」のG・P・ハントリー・ジュニア、ロル・ネイシュその他で撮影は「化石の森」「Gメン」のソル・ポリートの担当である。

1936年製作/115分/アメリカ
原題:The Charge of the Light Brigade

ストーリー

19世紀の中頃、英国政府はインドの豪族スラット・カーンの亡父に与えた年金を打ち切った通知の使者としてハーコート卿を派遣し、ジエフリイ・ヴィッカース大尉が彼に随行した。カーンは表面快く受諾したが、内心復讐を企んでいた。当時は英と露がクリミアで正に戦端を開かんとしていた頃である。ヴィッカースはカルカッタ守備隊々長キャンベル大佐の令嬢エルサと婚約していたが、彼女はヴィッカースの弟ペリイ大尉と恋仲になっているので、兄弟の間に口論が起こった。ヴィッカースは軍馬購入のためアラビアへ派遣され、原住民の襲撃を退けて任務を果たした功により少佐に進級し、キャンベル大佐の駐屯地チュコテイに転勤を命ぜられる。カーンは秘かに国境の原住民を煽動していたが、守備隊司令官ベンジャミン・ワーレントンはそれを知らずチュコテイ部隊を演習のため出動せしめたので、手薄に乗じたカーンはチュコテイを攻撃し英軍の残留隊は危機に落ちた。カーンは使者を送って降伏するなら攻撃を中止する旨を約束したので、少数の将校は女子や子供を守って小舟で避難することになった。一行にはエルサやヴィッカースもいる。ところがカーンは約束を破って突如攻撃を始めた。負傷したヴィッカースはようやくエルザを助けて逃げ延びる。救援隊が到着した時カーンはキャンベル大佐を始め幕僚、婦女子を虐殺してクリミアの露軍に投じた後だった。やがて、ベンジャミン卿、ヴィッカース並びにペリイもクリミア出征を命ぜられる。出発前エルザはヴィッカースを訪れペリイを愛していることを告白し、彼の身を頼む。クリミアでは露軍の根拠地セバストポールの攻撃が始まる。英軍司令官メースフィールド卿はヴィッカースをベンジャミン卿のもとに使者として「攻撃すべからず」の命令を伝えしめる。ヴィッカースはカーンが露軍に投じていることを知っているので、チュコテイの復讐を企て故意に命令を変更して「直ちに攻撃を開始すべし」と伝えた。そして彼は戦死を覚悟しメースフィールド卿に宛て命令を変更した服罪状を書き、これをペリイにもたせてやった。こうして軽騎兵全軍は決死の突撃を開始し、ヴィッカースはカーンを刺し殺して自らも戦死し、全軍はほとんど全滅したがこれを口火に英国の総攻撃はついに露軍を撃退した。メースフィールド卿は多数の部下を殺した非難に対し、ヴィッカースの服罪状を火中に投じ、自ら潔く責めを負った。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第9回 アカデミー賞(1937年)

受賞

助監督賞 ジャック・サリバン

ノミネート

作曲賞 マックス・スタイナー
音響録音賞  
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映画レビュー

5.0カタルシスがあります 英国の伝説の戦いとして誉れ高い バラクラヴァの戦いがこれです

2022年11月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1936年の米国白黒映画

英国では誰もが知るクリミア戦争でのバラクラバの戦いがクライマックスになっています

ウクライナ戦争で毎日その地名を聞かない日はないクリミヤ半島での戦争が19世紀にもあったのです

その戦争については、1968年の英国映画「遥かなる戦場」をご覧になられらると理解が早いと思います

このバラクラヴァの戦いでは、ロシア軍の堅固な砲兵陣地に対して、英国龍騎兵連隊が無謀とも言える勇猛果敢な突撃を行い、多大な犠牲者が出たものの勝利を掴みました
それが21世紀の今もロシア海軍の根拠地になっているセバストポリ要塞陥落のきっかけを作ったのです

英国に取っては、日露戦争の旅順占領に於ける二百三高地の戦いみたいな位置付けのようです
というか、二百三高地での乃木将軍の脳裏にはこのバラクラヴァの戦いの事があったのかも知れません

映画はインド北東部からはじまります
なんでインド?と思っているうちに、結構な山場が過ぎて、起承転結の転でようやく主人公の部隊がクリミア戦争に向かうことになります

インドでの因縁が、このクリミア半島のセバストポリの近くバラクラヴァの谷で戦いとなるのです

中盤、主人公ジエフリイ・ヴィッカース大尉が、アラビアに軍馬数百頭の買い付けに派遣され、少数の部下と共に陸路その軍馬を率いて黒海の東南岸、今のジョージアの港町バトゥミに届けるエピソードがあります
司令部があるインド最東部のカルカッタから直線距離で5000キロ
買い付け先がカタールとしたらそこからでも2000キロ
恐ろしく大変な任務です
そしてクリミア戦争に備えての重要任務でもありました
少佐に昇進するのも当然でしょう
この昇進により、クリミア戦争が始まると主人公は英軍総司令部詰めに配属され、総司令官の副官となります
これがバラクラヴァの戦いが生起する伏線となるのです

主人公のフィアンセと、主人公の弟との三角関係も織り交ぜて退屈せずに、男だけの殺伐とした戦争のお話にならないようにしてある脚本も優れています

監督はあの不朽の名作「カサブランカ」の監督マイケル・カーティスで、的確な演出です

インドのお話は、冒頭の悪役のスンラット・カーンへの英国からの年金打ち切りの通告が発端ですが、実のところインド版の攘夷に見えます
カーンは攘夷の急先鋒の藩主みたいなものです
インド人の民兵は幕府軍
まかり間違っていたら、日本が舞台になっていたかも知れません

クライマックスのバラクラヴァの戦いは1854年10月25日なので、本作前半のインドでのお話は1853年頃のことでしょう
そうペリー提督の黒船が日本に来航したのと同じ年なのです

原題は、「THE CHARGE OF THE LIGHT BRIGADE」
1968年の「遥かなる戦場」の原題も同じです
原作は、どちらも同名の詩によるものだそうですが、翻案には大きな違いがあります
無謀なロシア砲兵陣地への突撃の理由は伝令のミスとされているのですが、その通説の真相が本作では語られます
もちろんこれも脚色であると冒頭に断りがなされます

本作ではTHE LIGHT BRIGADEを龍騎兵と訳しています
「遥かなる戦場」では軽騎兵と訳されていますが、どちらも英語での呼称は同じです

本作では第27龍騎兵連隊、「遥かなる戦場」では第11軽騎兵連隊という設定になっています

ともあれ龍騎兵の突撃の格好良さ、軍服の華美さは本作の方が圧倒的に上です

負傷して落馬した旗手が、地面に伏せりつつも力を振り絞って英国国旗の旗竿を揚げると、それを通過しざまに別の龍騎兵がその旗竿を馬上から掴み突撃を続けるシーンは圧倒的迫力があります

遂にはほぼ全滅に近い多大な犠牲をだしながらも、前後左右に雨霰とふるロシア軍の砲撃をものともせず、さらにはロシア軍騎兵の迎撃も突破、不可能と思われたロシア軍の野戦司令部の高地を占領するのです
ボロボロになりながらもその高地に翻る英国国旗!
そしてインドでの因縁の仇もその戦いの最中になされます
カタルシスがあります

英国の伝説の戦いとして誉れ高い
バラクラヴァの戦いがこれです

英国がウクライナ戦争で前のめりなのは、170年前のこのような戦いがあったことがその心理の奥底にあるのかも知れません

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