劇場公開日 1973年9月22日

「時代の波に乗れない二人は案山子のような存在?」スケアクロウ talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0時代の波に乗れない二人は案山子のような存在?

2024年3月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

偶然に知り合った男二人のロード・ムービということなのですけれども。本作は。

粗暴な性格が災いしてか、刑務所となかなか縁を切れないかのようで、今度こそ洗車業で人生の再起を賭けているというマックスと、妻との関係性を築けずに出奔(しゅっぽん)してしまったというフランシス―。
どちらも社会の波に、上手くは乗ることのできなかった二人は、中身が伴っていない案山子(スケアクロウ)のような存在だったということなのでしょうか。

そう考えると、とてもとても「男二人の友情のロードムービー」などという、甘酸っぱい評が当てはまる一本では、決してなかったのではないかと思います。評論子は。
むしろ、胸にずんと重たい一本だったと思います。評論子は。

いろいろな事情から社会の「流れ」に乗ることができず…あるいは、乗り遅れて、精神的に病む者も少なからずいたであろう当時の世相を静かに描いた一本なのだろうも思います。

今(令和)の日本に置き換えたとすると、果たして今の日本は、どんな状況なのでしょうか。

本作は、いわゆるアメリカン・ニュー・シネマを代表する一本ということで、午前十時の映画祭13の一本として鑑賞した作品でしたけれども。
「病めるアメリカ」を、決して声高にではなくても、しっかりと描いたということでは、秀作と評することができると思います。評論子は。

(追記)
マックスの前では(彼の自分に対する関心が途切れてしまうことを心配しているかのような)ときに過剰なほどのおどけぶりや、案山子(かかし)がカラスを寄せ付けないのは、その警戒心を利用したものではなく、カラスを笑わせて楽しませることで、作物に被害を与えることを遠慮させているのだなどという荒唐無稽な屁理屈を捏(こ)ねたりするのも、マックスとの平常的な関係性を築きかねてのことなのだろうと思いました。評論子は。

彼が妊娠中の妻を残して出奔してしまったというのも、いちばん濃密であったはずの妻との関係性を上手に築けなかったからだったのでしょう。

そして、妻・アニーとの関係性が決定的に壊れて、もともと持ち合わせていた「素因」が爆発的に彼の中で膨らんでしまい、遂には発症にまで至ってしまったのが「真相」といったところでしょうか。

(追記)
一方のマックスにしても、お金を意外なところに隠していたり、異常なほどの厚着だったり…。
情緒的に、あまり安定しているとは言いかねる状況だったと思います。
同じく不安定たったフランシスに互いに惹かれ合い、衝突をしなかったのは、そんなところに素因があったのかも知れないとも思いました。
評論子は。

talkie
talkieさんのコメント
2024年4月11日

満塁本塁打さん、コメントありがとうございます。
いやぁ、ホントに『NOPE/ノープ』はレビューに困る映画でした。(涙)
なんとか書き上げたときは、ご一読いただけると嬉しいです。

talkie
満塁本塁打さんのコメント
2024年4月10日

ノープ へのいいねありがとうございます😊

満塁本塁打
talkieさんのコメント
2024年3月20日

トミーさん、コメントありがとうございました。
そうですね。世評では「男同士の友情あふれるロードムービー」のように評されがちな本作ですが…。
私も「悲劇的な結末」だったと思います。

talkie
トミーさんのコメント
2024年3月13日

共感ありがとうございます。
オズの魔法使いの弱虫ライオンとブリキの木こりに例えられる二人ですが、オズとは違い悲劇的な結末になりました。自分は温かい心を手に入れたマックスすら破滅に向かうのでは?と思いました。

トミー