劇場公開日 1950年9月8日

「敗戦国イタリアを浮き彫りにする圧倒的リアリズム」自転車泥棒 keitaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5敗戦国イタリアを浮き彫りにする圧倒的リアリズム

2012年5月25日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

命を繋ぐための商売道具である自転車を盗まれた親子の目を通して敗戦国イタリアの現実を見つめたネオ・レアリズモを代表する傑作。
ドキュメンタリーのようなリアルなタッチとシンプルなストーリー、時折描かれる持てる者と持たざる者の描写や善良な心の葛藤は叙情的かつ素晴らしい深みを生み出している。
実際に当時のイタリアでこのような自転車泥棒は毎日のように繰り返されていただろうと今になっても容易に想像することの出来るリアルさがこの名作の真骨頂だ。
デ・シーカはその鋭い洞察力で当時のイタリアを他人を思いやることさえ出来ない世であったことを映画という媒体を通して伝え、映画の可能性を押し広げたと言える。
そして、その圧倒的な写実主義の映像は映画という枠を超え、今でもなお残るイタリアの格差問題を浮き彫りにしている。

keita