劇場公開日 1950年9月8日

「惨めな姿を息子にみられる哀しさ」自転車泥棒 abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0惨めな姿を息子にみられる哀しさ

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

悲しい

ヴィットリオ・デ・シーカ監督作品で、第2次世界大戦後のイタリアで誕生したネオレアリズモ 映画の代表作。

不条理な物語だった。
弱者はより弱い立場におかれ、抵抗しようとしてもすぐ報復にあう様がとても悲しくなってしまった。

あらすじ
失業労働者のアントニオは、2年ぶりに役所のポスター貼りの仕事を得る。しかしこの仕事では、自転車が必要であると言われる。そのため彼の妻のマリアは嫁入り道具のベッドシーツを質屋に入れ、同じく質屋に入れてあった自転車を取り返す。意気揚々のアントニオ。息子のブルーノも自転車を拭いてあげる。マリアに制服帽子を詰めてもらって、いざ初出勤。
ポスター貼りを教えられ、一人で作業をする。すると、いきなり自転車を盗まれる。慌てて追いかけるが、意気消沈のアントニオ。警察も盗難届を受理するだけで他人事のよう。
アントニオは次の日友人と息子と共に盗まれた自転車を探しいく。
マーケットにいってもみつからず、盗んだ男と会話をしていた老人も協力的でない。老人が向かった教会では、必死のあまりミサで騒いだりと、神に背く行為をしてしまう。ようやく盗んだ男をみつけるが、彼の家には自転車はなく、逆に住人に冤罪を働いたと袋叩きにあう。
自転車は取り戻すことができず絶望的なアントニオ。遂に路上にあった自転車を盗んでしまう。しかし悪事はすぐにばれ、人々に取り押さえられる。ブルーノがいるからと釈放されるが、息子に惨めな姿をみられ、とぼとぼと帰路につく。
おしまい

最後の自転車を盗むシーンでアントニオは、盗むことをブルーノにみられないように、ブルーノを電車で帰るように促す。しかしブルーノは引き返し、結果的にアントニオが取り押さえられるのをみてしまう。それがアントニオが警察に連行されるのを防ぐのだが、惨めな姿を息子にみられることは父として一番嫌な出来事だと思う。

映画製作についてだが、アントニオは職業俳優ではなく、素人で失業した電気工であり、ブルーノは監督が街で見つけ出した子どもとのこと。これを知ったのは、鑑賞後なのだが、違和感全くなかった。違和感なかったのも、ほぼ全編ロケーション撮影で、ドキュメンタリー的撮影手法で取られていたからだろう。(wikipedia参照)

戦後の市民の貧困という現実を眼差し、問題として俎上に載せた作品だと思うので、観ることができてよかった。
ネオレアリズモ作品もっとみなくては。

田沼(+−×÷)