劇場公開日 1990年2月17日

「右から来たものを左へ受け流すの歌」7月4日に生まれて 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0右から来たものを左へ受け流すの歌

2023年7月6日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

7月4日といえばこの作品
10代の頃以来久々に2度目の鑑賞

監督と脚本は『プラトーン』『ウォール街 『JFK 』『天と地 』『ナチュラル・ボーン・キラーズ 』のオリバー・ストーン
脚本は他に原作者のロン・コービック
コービックの自伝を映画化した作品

愛国心に燃える若者が海兵隊に志願しベトナム戦争の前線で闘い重傷を負い2度と歩けない体になってしまった
帰国後野戦病院で粗末に扱われ怒りを露わにする主人公
車椅子姿になって実家に帰ってきた主人公は紆余曲折のすえやがて反戦活動家に変貌する

『トップガン』で一躍ブレイクしたハリウッドのイケメン代表格トムクルーズが若い頃に挑んだ社会派意欲作
アカデミー賞の前哨戦的位置付けらしいゴールデングローブ賞では見事主演男優賞を獲得
監督賞も脚本賞も作品賞も『7月4日に生まれて』だった
しかしアカデミー賞は監督賞と編集賞のみ
主演男優賞も脚本賞も作品賞もノミネートはされたものの惜しい結果となった
作品賞は『ドライビング Miss デイジー』
監督賞と作品賞が別なのはアカデミー賞の長い歴史においてわりと珍しいことのようだ
審査員の賛否が激しく分かれたのだろう
意見はまるで違っても大物審査員のメンツも大事にしたい
これこそ話し合いによる平和的解決であり妥協の産物だ
そのせいか映画comの評価は意外にもわりと低い
残念である

雨宮処凛をはじめ右翼から左翼に転向する者は日本でもよく見られるがロンは実際に兵士として身をもって地獄を体験しただけあって薄っぺらい甘ったれた連中とはまるで違う

保守なのかリベラルなのか
反米なのか新米なのか
思想によってこの作品の評価は分かれるかもしれない
自分はパヨクが嫌いだが戦争はもっと嫌いだ
戦場になれば映画鑑賞どころじゃない
仕事で海外に行くなんてまっぴら
もちろん自衛隊そのものには敬意を示すけどね

海兵隊の募集にやってきた軍曹役として『メジャーリーグ』でキャッチャーを演じたトム・ベレンチャーがちょっとだけ出演していた
軍曹の演説に陶酔する主人公の表情が印象的

主人公が自宅でキレまくり「ファックユー」とか「ペニス」などと叫ぶシーンは見どころ

メキシコ娼婦の全裸あり

きしくも母の予言は当たり大勢の群衆の前で演説する男になった主人公
車椅子の皆さんで会場に集まり戦争に反対し政府に抗議するあのシーンは感動した

愛国心ってなんなのか考えさせられる作品
「自由に反戦を叫べる権利も戦っている若者のお陰だ」という台詞も印象的
難しいことはよくわからないがただ言えることは自分で自分のことを愛国者だと自己紹介する奴に碌な奴はいないってことくらいかな
僕は戦争の話よりサミー・デイビスJr.の方が好きだな

野川新栄