劇場公開日 1950年5月9日

「「破れ鍋に綴じ蓋」」三人の妻への手紙 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0「破れ鍋に綴じ蓋」

2023年10月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

あまりこの年代の作品は観ない評論子ですけれども。
評論子が入っている映画サークルの映画を語る会のお題作品に選ばれたことから、観ることになった一本でした。

映画の内容的には「破れ鍋に綴じ蓋」とでも言うのですか、作中に登場する夫婦は、それらはそれらで、上手く釣り合って、そこそこ円満にやっていっているのかも知れません。
作中では影も形も表さない、エディなる謎の女性(三人の妻のそれぞれの夫とは、何やら因縁浅からぬ様子)からの駆け落ち予告の手紙が巻き起こす騒動を描いたロマンチック・コメディという位置づけの作品のようですけれども。

作品の本筋とは何の関係もないのですが、本作を観終わって、評論子には、別の感慨の方が強い一本になりました。

それは、この時代は、男女の服装がはっきりと区別されていたことを、改めて実感したことでした。

おそらく、それは、本作には、パーティのシーンもたくさんあり、タキシード姿の男性や夜会服姿の女性が多く映し出されていたせいでしょうか。

令和の今でこそ「性の多様化」が言われ、服装もユニセックス(男女兼用)なものがたくさんありますが、この時代は「女の服装」・「男の服装」というものがハッキリと別れていて、両者に兼用という考え方は少しもなかったようです。
そして、それ故に、社会的な「女の役割」・「男の役割」ということもハッキリと別れ
ていて、両者が混交したり、交換可能であったりしたことは、なかったことだろうと思います。

本作中には、鉄道という世の中のあり様をすっかり変えてしまう可能性のあるアイテムが、おそらくは世に出現したばかりの位置づけで描かれていますし、三人の妻のうちの一人であるリタは、ラジオ(おそらく、これも当時は最先端の情報機器)の番組放送作家(?)としての職業をもつという珍しい立場にあるということで、世の中の変化の「兆し」も、チラリとは窺われるのですけれども。
(未婚の時期ならばともかく、この時代に自分の職業をもって、夫とは独立した収入のある既婚女性は、そうは多くはなかったはず。)

登場人物の服装や、舞台となっている部屋の調度など、全体としてゴージャスな雰囲気の作りとなっていることと併せて、本来は、ポップコーン・ムービー的な(失礼!)、お気楽ロマンチック・コメディという位置づけの作品なのでしょうけれども、評論子には「令和の今は、果たしてどうか。」という、反面教師的な一本に観えてしまったと言うことになります。

評論子の独断と偏見もいいところとは思うのですけれども、「映画の評は本来は自由」ということに甘えて、評の一つとしたいと思います。
映画comレビュアー各位のご海容をお願いします。

いちおう、良作としての評価としておきたいと思います。評論子的には。

<映画のことば>
(とある夫婦の会話)
夫「私の(蓄音機)は(レコードを)何枚もかけられる。中国の放送も入る。テレビも(映る)。」
妻「テレビ局がないじゃない。」
夫「(テレビが映るのは)この町で1台だ。」
妻「まるで無駄ね。」
夫「テレビ局を作れとでもいうのか。」
妻「その大声で充分よ。」

talkie