劇場公開日 1956年9月8日

「本作を観ないでSF映画を語ることなかれ」禁断の惑星 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0本作を観ないでSF映画を語ることなかれ

2019年6月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

もしもSFオタクの大学があったとしたら本作は必修教材だ
一般教養として必ず何度も繰り返し観て頭に入っていないと落第だ
それくらい重要な作品だ

1956年製作だから世界初の人工衛星スプートニクの前年だ
だから冒頭のナレーションで人類の月着陸は21世紀末と言うくらいに古い作品だ

しかし改めて見直して、驚嘆するほど高いレベルのSF映画であることを再認識をした

本編の物語は基本シェークスピアのテンペストをSF解釈で翻案したものだ
お話の内容自体は当時米国でのSF小説の大流行の中では月刊の人気SF小説誌に掲載されてたり、SF短編小説集に収録されていたりする、ありがちなもので、さほど画期的なものではない
それほど当時の米国のSF小説のレベルは高かったのだ

たが、映像、設定、小道具、美術、衣装など本作のありとあらゆる部分が現代のSFの映像作品の全ての根本になっており出発点であることを、改めて再確認されられた

本作の影響力は計り知れない
幾つか例示してみよう

DVDに予告編が収録されている
そこに現れる映像は、星一杯の宇宙空間に流れる黄色い文字の文章
もちろんこれはスターウォーズが引用している

設定は一目観れば判るとおり宇宙大作戦(スタートレック)の元ネタである
最初のオリジナルテレビシリーズのお話とほぼ同じ展開だ
船長とドクターが中心になって物語が進む

美術も宇宙船は宇宙家族ロビンソンのジュピター2号の元ネタ
本作でことに有名なロボットのロビーは、宇宙家族ロビンソンではフライデーになり、本作のコックとロビーのやり取りはフライデーとスミス博士に引用されている
ロビーの初登場シーンの砂漠を土煙を上げて遠くを一直線に爆走しているシーンはスターウォーズにそのまま引用されている

クレール人の地下遺跡にある目もくらむ程の地下の縦空間はタイムトンネルの地下基地とスターウォーズのデススターの中心部の動力炉に引用されている

本作の円盤型宇宙船にメイン船体と二つの機関部を取り付ければそのままエンタープライズ号になる

エンタープライズ号のブリッジが円形なのは本作からの由来
本作の宇宙船のブリッジにある宇宙コンパスは宇宙戦艦ヤマトの艦橋にそのままのビジュアルで引用されている

クレール人が思考だけの存在になっているのは宇宙戦艦ヤマト2199のイスカンダル人に継承されている設定だ

乗組員の制服は色こそ違うがウルトラマンの科特隊の制服に肩の部分のデザインが継承されている
などなど
と、まあ本当に切りが無い

そのくらいに強烈なインパクトを当時の世界中のSFファンに与えたのだ
そして10年後、20年後と、本作に衝撃を受けた子供達が今度は作り手となって本作を土台にして今日のSF映画を切り拓いて行ったのだ

本作を観ないでSF映画を語ることなかれ
それほどの作品だ

あき240