劇場公開日 1963年10月26日

「名戯曲の映画化でアメリカ映画を代表する感動作」奇跡の人(1962) Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0名戯曲の映画化でアメリカ映画を代表する感動作

2020年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

映画を観て涙が止まらなかった作品のひとつ。偉人ヘレン・ケラーが生まれて初めて一つの言葉を知る、たったこれだけの物語なのに、人間の持って生まれた可能性には限界がないことを教えられて感動してしまう。アメリカ映画の強みには、ヨーロッパ文化から受け継いだ演劇の伝統に根差した作品と人の厚みがあります。それはサイレントからトーキーに変革した時、ハリウッドがブロードウェイから多くの人材を採用したことが始まりです。ウィリアム・ギブスンが自作の戯曲を脚色しアーサー・ペンが演出した本作は、舞台の映画化ではアメリカ映画を代表する名作になりました。舞台に続いて映画出演したアン・バンクロフトとパティ・デュークの名演は永遠に語り継がれるでしょう。

登場人物で見逃せないのが、ヘレンの兄の存在です。両親の庇護と対決するサリバンの苦闘をひとり客観的に見守る役割です。どちらにも付かない彼の立場で見直して観ると、より主題を理解でき、またそこに神の視点にも思える深さがあります。

Gustav
Gustavさんのコメント
2021年1月25日

キリスト教とは全く無縁の日本人の一映画ファンですが、欧米の映画を観始めた中学時代に気付いたことの一番は、映画の中に宗教の規範が大きく占める事でした。「我が道を往く」「友情ある説得」「尼僧物語」「野のユリ」などや「偉大な生涯の物語」のようなキリストを題材とした作品群を観て、日本映画には宗教を扱った名作が少ないと感じたのです。市川崑監督の「ビルマの竪琴」ぐらいの認識でした。キリスト教に代わる日本人の規範は恥の概念であることが、唯一の救いでもあったのです。
キリスト教国の特にアメリカ映画には、変わった人物が物語全体を客観視する役割を担う場合があります。意図的にではなく、人物配置が練られた脚本構成力の結果論に過ぎないのかも知れませんが、そこの神の視点を感じてしまうのです。フランク・キャプラ監督の「群衆」に登場する主人公の友人役(ウォルター・ブレナン)もその一つです。色んな映画を観て、視点を増やすと更に面白さや良さに気付けると思います。そんなレビューを読みたいし、書きたいと今も悪戦苦闘しています。

Gustav
iwaozさんのコメント
2021年1月11日

なるほど勉強になります!
もう一度、観直したいです。^ ^

iwaoz