劇場公開日 1987年8月29日

「やっぱり女の足か…」エル osmtさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0やっぱり女の足か…

2023年8月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公の徹底したパラノイアぶりには、途中で何度も笑ってしまうのだが、ラストのアノ展開に迄なってしまうと、もう不憫以外の何物でもない。
やはり、アルトゥーロ・デ・コルドバの演技が素晴らしい。
あの極端で異常な行動ぶりには、本当に思わず笑ってしまうほどに、あり得なさそうでいて、しかし現実には居ても全くおかしくはない、という、そんな危うい人格を完璧に演じている。
ラカンが自分の講義のレファレンスに使用したのも納得の恐るべきリアリティ。

教会の鐘のシーンはヒッチコックの『めまい』を思い出したが、間違いなく本作の影響は受けているのだろう。
そんなヒッチコックみたく、もっとサスペンスやスリラーな展開へ舵を切っても面白かったと思うが、原作に忠実だったということか?
というか、題材が題材ゆえ、己に真摯に向きあったということか。
というのも、あの不条理な主人公はブニュエル自身を投影していたらしい。
あの狂気に翻弄された主人公の一体どこまでが本当にブニュエルの分身なのかは分からないが。

osmt