劇場公開日 2022年10月21日

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「アメリカ南部の斜陽と家族の諍いがシンクロ。」熱いトタン屋根の猫 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アメリカ南部の斜陽と家族の諍いがシンクロ。

2022年11月30日
PCから投稿

ポール・ニューマン特集のおかげで初めて劇場のスクリーンで観た。性的に満たされない妻が自分を「熱いトタン屋根の上の猫」に例える有名なシーンは知っていたのだが、ほとんど映画の序盤だったことに驚く。それからも欲求不満を露わにするエリザベス・テイラーが良い。正直、エリザベス・テイラーにここまでの演技を期待したことがなくて、どうしても作り込まれた美貌ばかりが印象に残ってしまっていたので、申し訳ありませんでした、という気持ちになる。映画としては、舞台劇の丁寧な映画化という感じで、それぞれに次々と演技の見せ場は訪れるのはいかにも一昔前の演劇という気はするものの、そういうスタイルだと思えば特に邪魔にはならない。アメリカ南部の濃密な空気と、時代に取り残されていくであろう白人特権階級の閉塞感を感じられるのも良かった。

村山章