劇場公開日 2002年11月2日

「一人の庶民としての侍の生き様を描ききる演出の良さ」たそがれ清兵衛 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5一人の庶民としての侍の生き様を描ききる演出の良さ

2013年3月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

幸せ

総合:85点 ストーリー:75点|キャスト:80点|演出:90点|ビジュアル:70点|音楽:65点

 時代劇といえば集団での派手な切りあいや大きな出来事があったりするものだが、本作品ではそれほどたいした出来事が出てこない。むしろ謀反やさらに最も大きな出来事である戊辰戦争があったとき、その場面はあっさりと省略されてしまっている。描かれるのは所帯臭くて目立たない貧乏侍の日常生活。それに加えて、侍としての危険な出来事と危険な任務を否応なく受けざる得なかった出来事と、女の話だけ。確かにそれは個人として命懸けの大きな出来事ではあるが、派手なものが多い時代劇ではそれほどたいしたことではない。
 しかしそんな庶民的なありふれた侍を描く演出がとても優れている。刀を振り銃弾の中を突撃する戦争などなくても、侍を一人の人間としてしっかりと描いていくだけでこれだけ見応えのある物語になる。家庭のこと、仕事のこと、恋愛のことのようなこの時代によくいた貧乏人としての生活、そして侍としての体面、果たさなければならない義務といった武士としての姿までを思い入れ深く表現しているのが実に素晴らしかった。だから登場人物の感情や生き様やささやかな幸せが確かに伝わってくる。

コメントする
Cape God