劇場公開日 2022年5月13日

「またバスに乗って」EUREKA ユリイカ abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0またバスに乗って

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

青山真治監督作品。

凄い作品をみました…。
とにかく凄い。物語が、語られ方が、カメラワークが、省略が、、、凄い。

大きな物語が失墜してしまったポストモダンで私たちはどう生きるか。

私たちは沢井がバスの運転をするように、取るに足らない日常を往還して生きている。そんな日常にバスジャックという〈出来事〉が到来しても、バスジャック犯を撃退するようなヒーローにはなれず、トラウマを抱えて「以後」を生きざるを得ない。しかも家族には疎まれ、古き良き共同体の中で生きることもできない。私たちはあまりにも孤独に一人で生きないといけない。
そんな生き方は、バスジャック事件を生き残った兄妹のように、死へと放棄されていく。しかしそれでも生きなければいけない。ではそれはどのようにか。それが沢井と梢、直樹の邂逅と生への営み、バスでの旅によって「発見」されていく。

その「発見」について言うには、全てのショットについて言葉で語らなければならない。だがそれは不可能な営みだ。だから〈私〉が〈私〉自身で本作をみて、〈私〉の仕方で「発見」をしなくてはいけない。とにかくみなければならない。

ひとつ言えるとしたら、「哀悼すること」だろう。絶えず哀悼する旅に出向くこと。けれど日常に帰る道筋はあるのだろうか。そしてどのような日常に帰るのだろうか。

その答えにはたどり着けていない。私の「発見」の旅は往路の途中でしかないのかもしれない。

田沼(+−×÷)