劇場公開日 2022年5月13日

「無言で、心へのノック」EUREKA ユリイカ きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0無言で、心へのノック

2022年6月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

文中にURLを貼ったために(=当サイト規則違反) レビューが削除されてしまいました、
共感とコメントを下さっていた皆さん、ごめんなさい。

・・・・・・・・・・・・

言葉を失う凄惨な事件を共有した、中年のバスの運転手と、乗客だった遺児たちのロード・ムービーです。

事件から受けたPTSDをば、お互いに言葉にして話し合うとか、慰め合うとか、それさえも出来ないあの3人が、虚ろな視線ながら、3人を繭のように包むバスの車内で、窓辺をコンコンと叩きます。

モールス信号のように小さくノックをし、心臓にパルスを与え、命に心マを加えるあのシーン、
見ているこちらの胸をも激しく揺さぶり動かしました。

「扉を叩くひと」を思い出しました。
ノックは打楽器。
魂に直接響く原始の鼓動。

・・・・・・・・・・・・

ジョルジュ・ルオーの絵に「郊外のキリスト」という作品があります。
誰もいない村の通り。月が出ていますが逆光です。表情はよく見えません、
立ち尽くしている、子供だろうか 2つの小さな影に、いつの間にか後ろからそっと誰かが寄り添って立っている絵。
でもお互い顔も見ず、同じ方向を向いて、うつ向いたまま3人のシルエットが並んでいる絵。

この映画を見ながら思い出していました。

(2018年頃鑑賞)

きりん