劇場公開日 2001年5月26日

「【カルト教団に家族を”引き離された、遺族の想い”をドキュメンタリータッチで描く・・。湖畔に投げられた百合の花が哀しい。】」DISTANCE ディスタンス NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【カルト教団に家族を”引き離された、遺族の想い”をドキュメンタリータッチで描く・・。湖畔に投げられた百合の花が哀しい。】

2020年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

知的

難しい

ー今作品には、カルト教団「真理の箱舟」が起こした、無差別殺人のために水道水に劇薬を混ぜるシーンを含めた凄惨なシーンは、一切出てこない。-

■「真理の箱舟」に家族を奪われ、(そしてその家族は、無差別殺人を犯し、教団により殺害され、その灰を湖に撒かれた・・)4人、きよか、実、勝、敦が前半、ある駅に集まり皆でジープで湖に向かい、花束を投げるシーンが淡々と、きよかが作ったお弁当を食べるシーンなどは少し楽し気に描かれる。
 ”ピクニックのようだね・・”
 その日は、彼ら4人の家族だった者たちの命日であった・・。

 そこに、元教団にいた坂田(浅野忠信)が、バイクで現れ・・。
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■彼らから家族が離れていくシーンが挟み込まれる・・。

・教育熱心な夫、環(遠藤憲一)がある日、教団に入ると言い出し、困惑し子供はどうするのかと詰め寄る妻きよか(夏川結衣)
 そして、突然帰宅した夫を激しい剣幕で家の外に追い出すことも思い出す。

・妻(山下容莉枝)からある日、教団に入信すると告げられ、(隣には教団の男(村杉蝉之介:不気味である・・)が一緒に説得する・・。
 ”大事な価値観を見つけたの・・”
 逆上する、サラリーマンの夫、実。
 ”お前ら、おかしいよ・・”
 その後、医者から妻が二度、堕胎していたことを告げられる実。
 ー何も知らなかったのだ、妻なのに・・-

・勝(伊勢谷友介)は夏の暑い日、兄から何気なく”入信するよ‥、暫く会えなくなる”と言われて、別れる。

・敦(ARATA)は姉の夕子(りょう)のことを元教団員で、事件直前に逃げ出した坂田から聞いている・・。画面では、坂田と夕子の湖畔でのやり取りが描かれる・・。
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 彼らの車、バイクが盗まれ、困惑しながら、山道を進む。
そして、たどり着いた且つての教団のアジト。

 彼らはそこで、様々な思いで話をする。
・”サイレント・ブルー”の話を姉としたことを思い出す敦。

・”神、正義が大量虐殺を引き起こして来た・・”

 そして、翌日、皆で湖に寄ってから、都会に戻る・・。
 その途中、不意に坂田が敦に”貴方は誰ですか・・、夕子の弟さんは自殺したはず・・”サングラスをかけたまま、無言の敦。
 そして、皆別れる。

 ー場面は、急遽、湖に戻る。敦が独り百合の花束を持って、湖畔の桟橋に佇む。そして、”父さん・・”と呟いてから、4人の古い家族写真を焼く。
 そして、桟橋から大きな炎が上がる・・。-

 エンドロール:湖畔に打ち寄せる波の音だろうか、水音が静に響く。

<近作品は、エンタメ要素は希薄で、物語は大切な家族をカルト教団に奪われた人々の姿を淡々と描く。だが、それが却って人の心に忍び込むカルトの恐ろしさを描いている作品。

 敦は姉、夕子を深く愛していたのではないか? だから、後を追ったのではないだろうか?
 だが、魂魄はこの世に残り、思い出の家族写真を”忌まわしき湖”で焼くことで、深い哀しみ、怒りを癒したのではないか・・。
 等々、鑑賞後もイロイロ考えてしまった作品。
 鑑賞後の余韻が、哀しく、苦く残る作品でもある。>

NOBU