劇場公開日 1979年12月15日

「脱獄囚に共感してしまう」アルカトラズからの脱出 parsifalさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5脱獄囚に共感してしまう

2023年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

 アルカトラズ島に囚人として連れてこられるのは、脱獄を試みて失敗した囚人やよっぽどの凶悪な囚人。他の刑務所では手に負えない奴ら。普通に考えると、悪い奴らに共感するのは不味いのだが、この作品では、脱獄を計画する囚人を、人権が抑圧されている存在として描き、視聴者が共感できるような人間として描いている。ネズミをペットとして飼っているドク、新入りのクラレンス、黒人のイングリッシュ等。彼らは囚人なのだが、所長や看守らが酷い奴らとして描かれるので、脱獄を計画するのも理解できるっていう感じだ。確かに、どんな人間にも生きがいや自由を希求する気持ちがある。
 バレたらかなり酷い懲罰、そして刑期の延長が待っている。周囲の協力も得られないだけに、緊迫感も相当なものだ。脱出口を広げるための工具を作るために溶接をしたり、そっくりの絵を描いたり、頭だけの人形に髪を張り付けたりと、あの状況下で脱獄できるとは思えませんでした。
 海を渡りきれたのか、はっきりとは示されず、その後の彼らは行方知れずなのだけれど、菊の花が無事上陸できたことを示唆して終わる。
 囚人を主人公にして、悪者でも善人でもない視点で、脱獄劇をサスペンスに仕立てるなど、イーストウッドならではの映画でした。

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