劇場公開日 1968年3月20日

「怪獣とは出現する背景は違うが、怪獣映画の一変種には間違いない」妖怪百物語 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5怪獣とは出現する背景は違うが、怪獣映画の一変種には間違いない

2020年3月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

1968年3月公開
ガメラ対宇宙怪獣バイラスとの併映作品

妖怪ブームは1968年1月から始まったゲゲゲの鬼太郎のテレビアニメ放映の人気爆発で始まった

1966年10月から翌年3月にかけて放映された実写テレビドラマの悪魔くんが好評であったことから、怪獣以外に子供にうけるコンテンツとしての可能性が浮上していたということだろう

妖怪や亡霊ならば、怪獣のようなミニチュアセットの破壊シーン等の金と手間の掛かる特撮はさほど必要とはされない
だから参入障壁は大変低い
むしろ過去の怪談映画のノウハウをそのまま流用できる
さらに怪獣映画を連れてきた大人も本編で楽しめるし、子供も妖怪がでてくるだけで退屈しない
怪獣映画と妖怪映画のカップリングは大変相性が合うといえる

大映はガメラを撮影する東京撮影所以外に、時代劇を得意とする京都撮影所をもっていたから、円谷英二しかいない東宝には真似のできない、特撮二作品の併映を番組にできるのだ

大映の京都撮影所は大魔神シリーズ3作品を撮っていたから、妖怪ならより簡単に撮影できる
むしろお手のものだろう

本編の時代劇のクォリティーは高く、21世紀の現代の観客の目でみると驚くほどだ
というか現代の時代劇のクォリティー低下の程が逆に痛感させられる

特撮のレベルは大したものではない
唐傘お化けなぞは人形劇レベル
それでも、俄かにかき曇り妖怪のでる妖しい雰囲気を照明や撮影で表現していく技術は高い

溝口研二監督の幽玄世界の演出で鍛えられた技が伝統となっているのが本作にも感じられる

後に黒澤明監督の遺作まあだだよが大映の製作になっているのはそこを見込んでのことだったのではと感じるものだ

怪獣は漠然とした恐怖を暗喩する存在だろう
ならば、妖怪とはなんだろう
高度成長期に国土が近代化され、生活が洋風化いていくなかで、打ち捨てられていく古い日本の姿、因習、迷信
そういうものではないだろうか
それが当時の人々の精神世界に影響を与えたのが妖怪ブームの正体なのだと思う

繰り返し妖怪ブームは何度か訪れるが、そのたびに日本の土着的おどろおどろした雰囲気は消えて行くのだ

だから妖怪ウオッチがああなるのも、正に21世紀の妖怪だから当たり前のことなのだ
あれでも現代の子供達には十分に過去の日本の土着的おどろおどろした雰囲気を感じているはずだ

妖怪もまたモンスターだ
怪獣とは出現する背景は違うが、怪獣映画の一変種には間違いない

日本の特撮映画の系譜で忘れてはならないものだ

あき240