非行少女

劇場公開日:

解説

森山啓原作「三郎と若枝」より「天草四郎時貞」の石堂淑朗と「キューポラのある街」の監督浦山桐郎が共同でシナリオを執筆、浦山が監督した現代ドラマ。撮影は「愛と死のかたみ」の高村倉太郎。

1963年製作/114分/日本
原題:Each Day I Cry
配給:日活
劇場公開日:1963年3月17日

ストーリー

十五歳の若枝はうす汚ないバーで酔客と酒を飲み、ヤケクソのように女給のハイヒールをかっぱらってとび出した。東京で仕事に失敗して帰って来た二十一歳の三郎は、職安通いの空虚な毎日を送っていた。暗く陰うつな北陸の空、金沢の映画館の前で幼ななじみの二人は再会した。三郎はうらぶれた彼女に、なけなしの金からスカートを買ってやった。喜んだ若枝は、のんだくれの父親長吉と、いやな継母のいる家をとび出したわけを話した。若枝をこれ以上堕落させまいと決心した三郎は、翌日から少しずつおくれた勉強を教えてやった。若枝の心にやすらぎがよみがえり、三郎はうれし泣きする彼女の涙をそっとすすってやるのだった。しかし、その若枝をグレン隊の竜二がしつこく追いまわし、例のハイヒール代三千円をタテに彼女を犯そうとさえした。秋祭りの日、思い余った若枝は学校にしのびこみ金を盗み出したが、小使いに見つかって逃げた。三郎の家では、兄の太郎が村会議員に立候補するため大盤ふるまいの最中、そこへ泥酔した長吉が若枝のスカートを手にどなりこんできた。が、小使いが若枝の盗みをバラしたことからたちまち青菜に塩となった。三郎はその前に竜二から三千円をせびり取られており、いままでの若枝への夢が急に崩れてゆくのを感じた。彼は太郎のすすめを入れて遠縁の家の養鶏場を手伝うことになった。若枝はムリヤリ叔母の家にひきとられたが、ぬけ出すと三郎のもとに走った。だが三郎の態度はつめたく、心のよりどころを失った彼女は、三郎が去ったあと、失火で鶏小屋を全焼させてしまった。誰のせいでもない、ただ偶然がそれを支配しただけなのに世間はあらぬ噂で二人をしめつけた。非行少女の保護機関である北陸学園に入れられた若枝は、暖い眼に見守られながら静かな数週間をすごした。ここでも同級生の富子や新子の誤解から反感をかったが、しまいには同じ境遇にある者同士の奇妙な友情が生れるようになった。若枝はその間たった一度だけそっとぬけ出して、自分の家を見に行った。が、失火事件以来父親たちはどこかへ行ってしまったことが判った。三郎は金沢でバーテンをやりながら細々と暮していた。ある夜、竜二と出合った彼は殴りあいをはじめ、松太郎に助けられた。松太郎は小さな工場で辛抱づよく動きながら組合運動に活躍している男だった。“努力はいつか報われる”その彼の言動は強く三郎の胸を打った。彼はいままで道で若枝に会っても顔をそむけていた自分が恥かしくなった。三郎は学園に急ぐと、彼女にむかって叫ぶのだった。「元気出すのやぞ、二人で何とかやろうぜ」行方の知れなかった長吉は、女にも逃げられ病気で倒れていたのだ。若枝は大阪へ働きに行くことになった。彼女の中に雑草のようなシンの強さを見てとった三郎は、何も言わずに大阪行の列車にのせた。「三年たったら迎えに行くから頑張るんや」三郎が叫んだ。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0一周?廻って新しい!

2024年2月1日
Androidアプリから投稿

子供が子供で、大人が立場の違いが有っても大人だった時代の映画(現代は全てが混沌としていて逃げ道が見えない)映画として完成度はとんでもなく高い、ラスト近くの駅仲喫茶店での主人公達のやり取り(周囲の第三者の表情、TVニュースの結末)は素晴らしいこの演出は神が掛かっている。

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なんてこった

4.5非行の更生過程はよくわかるけれど、余計な心配をしたくなる。

2023年12月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
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てつ

4.5今見ても色褪せない浦山監督による傑作映画

2022年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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Kazu Ann

4.5しみじみ、いい映画だった。

2022年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画を見終わった後も、心に余韻がいつまでも残る、いい映画だった。全般的に暗い映画であるが、貧しく家庭環境の問題から一人飛び出した主人公の中学生の女の子。決して非行少女ではなく、誰も自分のことを思ってくれない寂しさ、葛藤から周りにぶつかっていく。そういう強さは持ち備えているからこそ、一層寂しさが漂う。幼なじみの浜田光夫がこの子を構ってあげることから彼女も心を開く。
いじめる人もいるが助けてくれる人もいる。ケンカもし、ストレートに感情をぶつけ合っていく。二人の仲も親同士の問題もあり、周りは認めるどころか引き裂こうとする。二人には安心して心を許す相手は他にいない。
彼女は学校には行けず、彼も生きるためには仕事もしないといけない。別々に離れて仕事をするが、会えないことで辛い日々が続く。そうして、ある事件が起こり、そのことが原因で彼女は施設に預けられる。
水商売をしている叔母が引取に来るが、教師がそういうところには返す訳にはいかないとキッパリ断るところが気持ちいい。
彼女は決断する。洋裁の技術を身に付け、大阪に就職することを。彼には別れを告げずに、町を出て行くことも。教師は彼に合う方がいいと勧めるが、彼女は決断する。
出発間際に、彼がこのことを知り、彼女を引き戻す。彼の説得に、彼女は混乱し喫茶店の中で激しく泣く。しかし、彼は立ち上がり、列車に彼女を連れて行き、乗せる。
彼は三年後に会えることを期待して。

彼女は心に深い傷を持っている。しかし、人に甘えることなく、しっかり自分の力で立とうしている。彼からも一旦、捨てられたと感じているものの、自分に優しくしてくれた彼を忘れらない。映画の途中から、彼女の心の動きがこちらにも伝わってくる。
とてもいい映画である。

20140213@広島市映像文化ライブラリー

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M.Joe

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