劇場公開日 1977年11月19日

「第1回日本アカデミー賞など数多くの映画賞を獲得するのは当然の傑作中の傑作です」はなれ瞽女おりん あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0第1回日本アカデミー賞など数多くの映画賞を獲得するのは当然の傑作中の傑作です

2022年2月22日
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瞽女(ごぜ)というのは、門付(かどづけ)巡業する盲目の女旅芸人のこと
通常は数名のグループで巡業するようです
主に正月や、お祭りなどのお祝いの日に三味線で豊作を願う歌やお祝いの歌をメインにしているので、そうでない時は合宿所のようなところに集団で暮らしています
様々な世俗的な歌も求めに応じて歌ってくれるので、そろそろ巡業してくるのではないかと村々の人達は楽しみに待っているのです
目の不自由な少女は瞽女になって生活を立てるという道もあるとは知られいるようですが、かといって伝手がなければどこに頼っていいかもわからないのです
伝手があっても、八年は厳しい修業してようやく一人前になれる世界です

三味線や歌の修業だけでなく、厳しく自分を律して巡業先などで男性と交わったりしないように指導されます
瞽女は神様の嫁だから男と寝てはいけない建て前なのですが、そうしないとすぐに売春婦のような存在に堕ちてしまう誘惑が多いからでしょう

はなれ瞽女というのは、その戒律を破った瞽女のことです
男と交わったことが発覚すると、集団生活の場から追放され、巡業にも同行できません
フリーの瞽女となり、たった一人で各地を巡業して歩きます
オフシーズンでも戻るところはなく、あてどもなく門付巡業して歩くのです
たまたま結婚式などに出くわしてお祝いの歌を歌うなどして生きていくのです
吹きさらしの祠で寝るのは当たり前の生活です
男に騙されることも数多くあるのです

物語は若狭小浜の漁村の少女おりんが、瞽女になるいきさつから始まります
そして成長して将来を期待されるまでになりながら、はなれ瞽女になってしまうのです
時代は物語の途中でシベリア出兵の直後だとわかります
地震のシーンがありますから、関東大震災のあった1923年だと思われます

テーマはあくまでも、男女の純粋な愛です
軍国主義反対だとかそんなものは関係ありません

目が見えないが故に男の本質を見抜いて、その真心を愛する女
無私の心で女を愛する男の物語です
愛しているからこそ、はなれ瞽女のおりんを抱かないでいたいのです

終盤にたった一度だけ二人は結ばれるのですが
その純粋な愛の結末は悲しいものでした

はなれ瞽女は野垂れ死ぬものだと劇中何度も話されます
そしてそれがどういうものかをラストシーンが教えてくれます

純粋な愛とはどんなものか胸を打たれる物語です

厳しい運命の人生でありながら、屈託なく明るくいきるおりん役を岩下志麻が目を見張るような好演で見せます

篠田正浩監督の演出も冴えていて、それを宮川一夫のカメラが美しい映像で撮っています

第1回日本アカデミー賞など数多くの映画賞を獲得するのは当然の傑作中の傑作です

ぜひ「津軽じょんがる節」も併せてご覧下さい

あき240