劇場公開日 2000年4月29日

「生きていることが幸せとは限らない」アメリカン・ビューティー Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0生きていることが幸せとは限らない

2015年12月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

怖い

難しい

郊外の新興住宅地に暮らす夫婦と娘の三人家族。
夫婦仲は冷め、娘は親と意思の疎通がない。
おかしな青年とゲイ嫌いの父親がいる隣家も同様の家庭だ。
だが夫がリストラに合い、娘の友人に性的妄想を抱き、妻は浮気、娘は隣家の青年と駆け落ちを決意し……。
コミカルで辛辣な家庭崩壊ドラマ。
アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞の5部門を獲得。
(映画.comより引用)

なかなかエグい映画だった。
「人間の汚い部分を容赦なく」系。笑

さすがにアカデミー賞獲りまくってんな!
中でも、主演男優賞(ケビン・スペイシー扮するレスター・ブレナン)は間違いない。
あの人、怒鳴るときしゃべり方がやたらリズミカルになってラッパーみたいですごい面白いの。笑
ベッドで妻と言い合うシーンがあるんだけど、今まで何も言い返せなかった妻に言いたいこと全部ぶちまけて、勢いそのままに背を向けてこっそり「してやったり」って顔になるのほんと爆笑だった!

っていうか世の中の「夫」って、こんなに迫害されてるもんかね。
妻の発言も娘の態度もいちいち酷すぎて、共働きだからとか夫婦で腹割って話せるとかっていうレベルじゃなかった。戦慄。
「家族」というものに対して壮大な理想を抱いているんだよね私は。ガラガラガラ・・・(崩壊音

一般的に、妻へのDVやモラハラは話題になるけど、夫へのDVやモラハラはなかなか表に出ないってなんかで読んだな。
男の方が物理的な力が強いから、妻を痛めつける=弱いものいじめ、ってなるからかな。
男=強い存在、っていうプライドがあるから女性以上に周りに相談できなかったりして、でも実は多くの夫が苦しんでいる現状があって、だからこそ映画とかドラマとかで「虐げられる夫」がよく描かれるのかな。
そう考えると、歴史的に「強い存在」とされてきた男性って可哀想な面もあるな。
強くない男もいれば強い女もいるからな。
そもそも性別なんか関係なく相手を傷付ける言動は慎みましょうって話だな。
私は元々気性が荒いうえ産後さらに荒れてしまいその結果気づかぬうちに他人を不愉快にさせてるからきっとこの妻と同じような瞬間も多々あるんだろうな。
はぁ・・・ホルモンバランスとか言い訳にしてる場合じゃない・・・

エンディングは、冒頭のナレーションで言っている通り頭をブチ抜かれて死ぬんだけど、犯人は誰でしょう?っていうドキドキが残っています!

みんな色んなものを抱えて生きていて、いつもはひた隠しにしてるけどちょっと弱くなったときにそれが露呈してしまって、そんな自分を受け入れられる人と受け入れられない人がいる。
受け入れられないあまりに証拠隠滅に走る人もいる。
自分がどっち側の人間かは実際にそうなってみないとわかんないのかもね。

一番不気味なのは、これを観終わったときに、タイトルにも書いたけど「生きていることが幸せとは限らない」って思ったこと。
確かにレスターは死んだけど、「自分は幸せだ」と心から感じてそう呟きながら痛みを感じることもなく死んだ。
後に残された人たちは、命はあるけど今まで通り苦しみとか行き場のない負の感情を抱えながら生きていかないといけない。
どっちが幸せかって正直わかんないな。
今は生きるための明確な目的があるから平気だけど、「死にたい」って毎日のように言ってた頃とかに観なくてよかった。危険。

だって公開年2000年ってことは私まだ13歳だったんだよね。
中学生のときに観てたらやばいな。病んでたし。
あの頃、同級生たちはこういうの観てたんだろうか・・・ノー天気な中学だったから観てないだろうな。笑

ちなみにこの映画は、独身時代に年間100本映画を観ていたという幼児教室で知り合ったママさんに教えてもらったんだけど(ちょっと前に観た「スパイ・ゲーム」もそう)、これをお勧めしてくるあたり彼女とは本当にいい関係を築けていると感じます。笑
彼女は今頃私が推した「シンドラーのリスト」を観ている。

Chisa