劇場公開日 1969年8月1日

「日露戦争を知りたいなら、「二百三高地」と本作の2本が最良の作品だと断言します」日本海大海戦 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日露戦争を知りたいなら、「二百三高地」と本作の2本が最良の作品だと断言します

2020年10月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

日露戦争の日本海海戦がどのように起ったのか?
その海戦はどのような展開であったのか?
東郷平八郎連合艦隊司令長官とはどのような人物であったのか?

そこに興味があるなら本作をお薦めします
1983年に「日本海大海戦 海ゆかば」という良く似た題名の作品があります
しかも東郷提督を本作と同じく三船敏郎が演じていますから混同しがちですが、あちらは海戦そのものをみたいと思うなら肩すかしとなると思います

さて、本作は1969年8月公開
特撮の神様円谷英二の実質的な最後の上映映画作品となります
同年12月公開の怪獣映画「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣総進撃」の特技監督のクレジットも円谷英二ですが、これは名前だけで撮影には一切関わっていません

従って大変に力の入った特撮による海戦シーンを堪能できます
同時期の怪獣映画とは雲泥の差のクォリティです

本作直前の同年7月公開のSF映画「緯度0大作戦」は円谷英二の特撮ですが、折角の超科学で建造された潜水艦の戦闘シーンが殆どなくフラストレーションがありました
しかし本作では、たっぷりと戦闘シーンを満喫できます

冒頭では、なぜ日露戦争が勃発して開戦に至ったのかを簡潔にその経緯を説明します

そして序盤は、旅順港閉塞作戦における有名な広瀬中佐のエピソード
広瀬中佐は加山雄三が演じて、その人物を掘り下げて紹介してくれます
「杉野はいずこ!」の名シーンももちろんあります

中盤では旅順要塞攻防戦での二百三高地占領を描き、それが日本海海戦にどのような意味があったのかを的確に伝えます
笠知衆演じる乃木将軍は、名作「二百三高地」で仲代達矢が演じた以上の実在感があります
東郷司令長官が旅順要塞攻略中の乃木将軍を訪問するシーンは名シーンで印象に強く残ります

そしてクライマックスは決戦たる日本海大海戦そのものとなり、海戦の経過を丹念に描きます

東郷司令長官が超有名な丁字戦法の一斉回頭を命ずる仕草はちょとさりげない仕草で行われます

右手を高々と上げてゆっくりと左に向けて下ろす、その芝居がかったポーズが脳裏にこびりついているのでちょっと拍子抜けします
ですが、まあ本当はこんな感じだったのだとは思います

また各パートをつなぐように欧州における明石大佐の国際謀略活動が挿入され、全く退屈しません

日露戦争を知りたいなら、「二百三高地」と本作の2本が最良の作品だと断言します

横須賀の海岸に三笠記念公園があります
そこに本物の戦艦三笠があります
今はもう喫水線から下は埋められてもちろんもう動くことは有りません
しかし当時の姿そのままに復元されて、本作を観てから見学されると感慨が一段と深く感じることができるでしょう
100年も前の戦艦ですが、その大きさ、鋼鉄の厚さ、主砲の巨大さに圧倒されると思います
2005年の日本海海戦100周年記念の時に見学しました
その時には「天気晴朗なれど浪高し」の超有名な電報の送信票の実物も展示されておりました
手書きで几帳面な小さな文字で明瞭に書かれています
本当にあったことだ
実際にこの送信票を書いた人物がいて、実際にこの鋼鉄の軍艦に乗って100年前に戦った将兵がいたのだ
映画とか、アニメだとか、小説だとか、ドラマだとか、そんな空想の産物ではなく、本当に起こったことだ
そう強く実感できました
正に皇国の荒廃この一戦にありだった、その重責の恐ろしいばかりの重さを感じることができました

本作をご覧になられたなら、是非そちらもご訪問されることをお薦め致します

あき240