劇場公開日 1983年7月23日

「タロとジロ」南極物語(1983) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タロとジロ

2017年10月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

興奮

実写の日本映画の興行成績としては今も歴代2位のメガヒット。
南極・昭和基地に置き去りにされながらも生きていた樺太犬、タロとジロの奇跡の実話。
日本映画の記録に、日本人の記憶に、色んな意味で残る名作。

最初の1時間くらいは辛抱して、映画がやはり面白くなるのは、置き去りにされてからの犬たちの壮絶なサバイバル。
ここは一転して、創作もあるが、ドキュメント風。
想像を絶する寒さ、餌も無い。
自力で首輪を外し、この極寒の地をさ迷う。
凍死、餓死。氷と氷の間に挟まれ、氷の海に落ち…。シャチの襲撃。
15頭が、一頭また一頭と命を落としていく。
変な言い方をすれば、それが当然。生き残れる希望など無い絶望の状況…。
見てて本当に胸が痛い。

並行して描かれるのは、犬係であった二人の隊員の苦悩。
帰国後、彼らを待ち受けていたのは…。
無理もない。犬たちを見捨てて、自分たちだけ帰ってきたようなものだ。
これが現代だったら、ネット上やワイドショーなどで、何も分かってない輩が分かってるかのように、ただ批難と誹謗中傷を浴びせるだけ。
断じて故意に置き去りしたのではない。彼らの力ではどうしようもない、やむを得ない事情があったのだ。
誰よりも心痛めたのは、誰よりも犬たちと接していた二人。自分の身内もしくは自分の一部が失われたようなもの。
弁明などしない。謝罪の旅に出る。
犬たちへのせめてもの…。

犬たちと隊員たちの苦難。
それがあるから、最後の感動がある。

高倉健、渡瀬恒彦、夏目雅子…気付けば、メインキャストは皆、お亡くなりに。
グッと耐え、飼い主たちへ頭を下げる姿は、まさに高倉健の為の役。
撮影後、数頭の犬を引き取ったという渡瀬恒彦。これももう一つの“南極物語”。
全てではないが、南極ロケも敢行。雄大な景色、スケール感。
オーロラは神秘的で、南極の冬は恐ろしさすら感じる。
それら映像を印象的に盛り上げる、誰でも一度は聞いた事のあるヴァンゲリスの名曲。

結末は分かってても、何度見ても、最後は感動。
タロとジロへ呼びかける健さんの表情、タロとジロを抱きしめる二人の姿が忘れられない。
『南極物語』は犬たちの悲劇だけじゃなく、犬と人の強い絆の物語でもある。

いつぞやハリウッドでリメイク。
ハリウッドすら魅了した話であるのは誇らしく、出来映えも悪くはなかったが、他国でリメイクって事は、実話が実話じゃなくなるって事でもあり…。

近大