劇場公開日 1989年9月15日

「魔人で救世主の加藤」帝都大戦 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0魔人で救世主の加藤

2018年10月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

寝られる

太平洋戦争も末期。大空襲により、帝都・東京は焼かれ、多くの人々が犠牲になった。
その怒りや憎しみが、あの男を蘇らせた。
魔人・加藤、再び…!

『帝都物語』続編。
…なのだが、全くの別物というくらい作風が変わった。
異様な不気味さはあるものの、前作がおどろおどろしい伝奇SFだったのに対し、ホラーテイストに。
冒頭、少女が戦争で母親を亡くすセンチメンタルなシーンから始まり、その少女と成長した雪子の交流、雪子と霊能力者・中村のほのかなロマンス…。
運命か因縁か何かの因果か、二人は加藤に立ち向かう…。
霊能力者たちのサイキック・バトルとなっているのが大きな特徴。

前作はストーリー的にちと分かり難かったが、今作は割りとシンプルな内容に。
が、良くも悪くもあの難解さ/複雑さも魅力ではあったので、物足りなさを感じてしまう。
SFXサイキック・アクションと謳い、わざわざ香港からアクション監督を招いた割りに、アクションの迫力はいまいち。
監督は前作プロデューサーで、後に『リング』などもプロデュースする一瀬隆重。顔がグニャッと歪んだり、人体破壊、少女の身体が怪虫と化すショッキング描写はインパクト残すが、実相寺監督が創り上げた独特の世界観は失われた。
舞台も戦時中だけになり、明治末期~昭和初期を背景にした大河要素は無く、スケールダウン。
丹波哲郎、土屋嘉男ら名優は出ているが、前作のオールスターキャストと比べると、キャスト面でもスケールダウン。実質主役の南果歩と加藤昌也も華が無い。
前作も決して傑作とは言い難かったが、それでも前作の方が魅力や面白味があった。
典型的な残念な続編と言わざるを得ない。

嶋田久作の怪演だけが唯一の救い。
今回死から蘇ったので、よりギョロッとした風貌になり、見た目のインパクトは前作以上。
蘇った加藤が電柱に立つシーンは、不思議とカッコ良さすら感じた。
サイキック・パワーは文字通りパワーアップ。本当に“ベガ化”し、いつサイコクラッシャーアタックを繰り出すんじゃないかと思っちまった。
もはや心身共に加藤と言ってもいいくらい。彼の存在無ければ…。
作中では恐るべき魔人だが、作品に於いては救世主なのが皮肉。

平成も終わり間近。
今再び、加藤が蘇ったら…?
リメイクでもいいし、シリーズの新作でもいい。
勿論その時は、加藤は嶋田久作氏で♪

近大