劇場公開日 1957年12月28日

「”初の東宝スコープカラー特撮作品”がスクリーンで鑑賞叶ったと思うと感無量」地球防衛軍 アンディ・ロビンソンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0”初の東宝スコープカラー特撮作品”がスクリーンで鑑賞叶ったと思うと感無量

2023年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館、TV地上波

65年も前の映画が現在でも大型スクリーンでの鑑賞に耐えるだけで驚異的と思います。

それこそTVや、所有しているLD、DVD等で繰り返し散々観てきた作品ですが、ワイド
スクリーンでの鑑賞というのは、そうしたものとはまた別物です。

古い”原点的”作品なので、技術的な事を論じて以降の作品との比較は全く無意味でしょう。

見どころはやはり、独特の「東宝パラボラ兵器」、所謂「スーパーシップ」メカと、そこにいやが上にも画面を盛り上げて補って余りある、全編に流れる「伊福部節」とのコラボレーションですね。
特にメカについて今回の「スーパーシップ」=α号、β号のデザインって、幼少期に当時の少年誌などの掲載で記憶している小松崎茂氏の未来絵図に登場のスーパーシップ的メカのデザインが大変類似しており、我々の世代的付近には親近感を覚えるという点も。

また、東宝俳優陣は勿論、後年まで円谷系で活躍されてお馴染みの顔ぶれが揃い踏みというのも素晴らしい見どころです。

ちょっと上げてみても、主演の「佐原」「藤田」「平田」三方は、丁度この十年後に『ウルトラセブン』の地球防衛軍で”参謀”に昇格登場(?)します。
ミステリアン統領役は顔は出ずとも、例によって東宝&円谷御用達的な土屋嘉男氏。
隊長役の伊藤久哉氏も『マン』、『セブン』で博士『Q』『マイティ・ジャック』『ミラーマン』とかにも。
自衛隊隊長役は、後に東映系の出演が多い中丸忠雄氏。
『Q』『マン』『セブン』とか円谷物に欠かせない『◯気人間』こと、大村千吉氏が例によって冒頭に登場しますしね。
博士役のハロルド・コンウェイ氏も『マン』、『マイティ・ジャック』や東宝怪獣&戦記物に出ずっぱりで、『トラ・トラ・トラ! 』なんかにまで出てるお方ですね。

更に作品のテーマとしても、ただの『宇宙侵略物』に終わることなく、当時の時代背景的にも「核開発競争」に対する反戦的なメッセージが込められている事も、如何にも日本らしさが出ており、良い部分に思えます。

特に今回は映像、音響ともレストアされて当時の質感が再現された(後年の名画座での鑑賞を完全に凌駕した)のを体験できた事、本当に感無量でした。

この映像、音響ともレストアが今回の劇場に足を運んでの鑑賞の大きな動機となっているので、その点にちょっと触れておくと、「東宝スコープ」の横長画面に出演者が横並びの会話シーンなどで良く表れていた、当時の音響の「パースペクタ・ステレオ(3.0ch)」までが再現されたところが何と言っても快挙と思います。
今回の4Kデジタル修復は当時の上映で使っていたタイミングデータ(色彩補正情報)が残されていたということで超絶美麗な映像に生まれ変わっているだけにとどまらず、この「パースペクタ・ステレオ音響」の再現を体感できる点は大きなポイントになっています。

これは是非、劇場で体感していただきたいとおもいます。

アンディ・ロビンソン