劇場公開日 1965年6月19日

「特撮ファン、戦争映画ファンどちらにもオススメできる傑作です!」太平洋奇跡の作戦 キスカ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0特撮ファン、戦争映画ファンどちらにもオススメできる傑作です!

2020年8月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

特撮はもちろん円谷英二
公開は1965年6月19日です

三大怪獣地球最大の決戦 1964年12月20日公開
フランケンシュタイン対地底怪獣 1965年8月8日公開
本作はこの二つの怪獣映画に挟まれて製作されたました

つまり本作は怪獣映画のピークに達した時に製作された作品であると言うことです

さらに言えば怪獣映画だけでなく東宝特撮が世界の特撮界の最先端を誇っていた時期だということです

但し本作は白黒作品です
本編監督の丸山誠治監督の出来る限りドキュメンタリータッチにしたいと言う意図でそうなったのかも知れません
公開日が6月の梅雨時だということは一番客入りが低調な時期ですから予算を掛けられない
単に、それだけのことであったのかも知れません

しかし、本作の舞台がアリューシャン列島のキスカ島という夏でも極寒の荒涼した島です
火山灰が降り積もったとおぼしき黒い岩と砂、そして雪という白黒の世界
空は暗く、白い濃霧が立ち込め、海もまたそれを写して鉛色です
そして救出に向かう艦隊もまた灰色の軍艦色
何もかも無彩色の世界なのです
だからこそ、本編監督が演出の一環として白黒撮影を選択したのだと思います
それは大成功していると思います

いずれにしても特撮班からすればどちらでも同じです
ミニチュアセットや飛行機の繰演、爆発シーン
やることは同じです
しかし、最高潮に達していた円谷英二の特撮班はこの白黒撮影を活かしてよりリアリティのある特撮映像をものにしています

艦隊根拠地の泊地に停泊する多数の艦艇シーンのリアリティ!
正に実写のような軍艦の巨大さ、鋼鉄の質感を表現出来ています
1/ 700スケールのウォーターラインシリーズという、軍艦の喫水線から上だけの精密なプラモデルを幾つも作ったことある男の子なら、おおおおっ!となることは間違い無しです
島の西側の未知の水道を迂回するクライマックスは手に汗握るシーンでした
そして近づいてくる軍艦の発する地響きのような重低音の機関音に気づいて哨所の兵が島の直ぐ脇をかすめるように進む軍艦をあっけにとられて眺めるシーンの軍艦の巨大さの表現は素晴らしいものでした

本編監督の出来るだけ実際に忠実に撮影するという方針は、特撮パートでも徹底されており爆撃機や戦闘機の交渉もしっかり成されています
ただイ号潜水艦を攻撃する航空機の映像は多作品からの流用であるため英軍のマーキングであるのはもったいないことですが、一瞬のことです

日本の特撮は怪獣映画やSFものスーパーヒーローものがまずイメージされます
しかし、本来戦争映画から日本の特撮は出発したのです
こちらの戦争映画の特撮の方が本流と言うべきなのだと思います

低予算でよくこれだけのクオリティを成し遂げた当時の特撮の技量の高さを是非堪能して頂きたいと思います

本編のドラマも大変出来がよく、オジサン俳優総出演というべき重厚さです

特撮ファン、戦争映画ファンどちらにもオススメできる傑作です!

本作は戦争映画だから、戦争を賛美している?
馬鹿言っちゃいけない
本作は反戦映画であると真面目に断言します
兵もまた人間です
同胞の命を大事に扱えないような軍隊は負けて当然なのです
それをなんとか一例だけでもやり遂げた
そのヒューマニティの精神を賞賛することが本作のテーマなのですから

最初のキスカ島突入時、霧が晴れ始めて突入を迷うシーン
艦隊の各艦と参謀より口々に突入の意見具申が上がるなか、司令官は断腸の思いで断固反転を命令します
これは宇宙戦艦ヤマトでの冥王星会戦での沖田提督と古代艦長との名シーンの元ネタになっていると思われます

あき240