劇場公開日 2023年9月23日

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「鬱屈した田舎の中学生達は爆発するきっかけを待っている。」台風クラブ カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0鬱屈した田舎の中学生達は爆発するきっかけを待っている。

2022年1月10日
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鑑賞方法:VOD

HDリマスター版をアマプラにて鑑賞。
リマスター版は暗闇のシーンが真っ暗で何も見えず、誰が監修したのかと問いたくなるほど最悪なものだった。

学生時代に映画館で観て衝撃を受け、それ以降一時期定期的にレンタルなどで鑑賞していたが、今回の鑑賞は実に20年ぶりくらいかと思う。

一口で言い表すことは難しいが、大まかなストーリーとしては、
全く不良にも見えないむしろ幼さすら残る普通の田舎の中学生達が、まるで台風の襲来とシンクロするかのように校内に居残り、日頃の鬱屈した脆く不安定な感情をそれぞれが爆発させ到底理解できないような行動に走る・・・といったところか。

しかしながらこの映画はストーリー云々を言うものではなく、少年少女が持っている彼らなりのはけ口が見つからない破裂ギリギリのエネルギーのようなものをいかに演技で表現し、観る側がそれをいかに受け止めることができるかが意図された見どころであり、鑑賞の醍醐味でもあるという、ある意味極めて演劇的な作品なのである。

工藤夕貴はじめ、実年齢も役とほぼ同じくらいのミドルティーンの無名の役者たちが、確かに演技としては未熟かもしれないが、嘘のつき用のない文字通り誠実で体当たりの演技をするため、リアリティのない軌道を外れた行動すらも不思議と受け入れる事ができてしまう。
工藤夕貴の布団に入り〇〇するシーンのワンカメ長回しや、それまでに優等生で二枚目役ばかりだった三浦友和のちょいクズで飄々とした人間臭い演技なども含め、相米慎二の強烈な演出力を感じ取ることができる、観る人の心に焼き印の如く心の目立つところに熱く半永久的に刻まれる、そういう映画なのである。

カツベン二郎