劇場公開日 1976年10月23日

「本当に描かれているのは、おそらく連合赤軍の山岳キャンプ内ゲバ連続殺人事件だ」青春の殺人者 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0本当に描かれているのは、おそらく連合赤軍の山岳キャンプ内ゲバ連続殺人事件だ

2019年10月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

本当は70年安保闘争と学園紛争の情熱の残り火を消せずに自暴自棄になった若者達の物語だ

実際に行動したものは連合赤軍のメンバーだ
映画にして代償行為ですませたものが本作だ

本作に撮される父や母の殺人、自己と恋人の自殺未遂はそのアナロジーなのだ
物語自体に大した意味はない
高校時代の八ミリ映画はその過去の熱い記憶
成田闘争の検問の機動隊も残り火をぶつける相手を求めているだけに過ぎない

当時のその70年安保闘争と学園紛争に身をおいていた団塊世代ならば共感できるのだろう
あるいは心を揺さぶられるのかも知れない

しかし、21世紀に生きる私達にとってそんなことはできない
無軌道な狂乱ぶりを理解も共感も出来はしない
本当に理解不能だ
冷たく醒めた視線で観るほかない

では21世紀の我々は本作を観る意味と意義は一体何であろうか?
団塊左翼老人達の胸中にはいまもこのような狂乱の残り火がくすぶっているのだということを知ることができることだろう
彼らに洗脳され利用されないようにするために観る意義はある

クライマックスのガソリン放火シーンは、つい先日の36人もの前途ある若者達が生きながら焼き殺された京都アニメーションのガソリン放火事件を思い出してしまう
ガソリン放火がどのような爆発的で破滅的な結果を及ぼすのか我々は知っている

団塊左翼老人が夢想している体制へのガソリン放火のイメージは本作のイメージなのだろう
実際は京都アニメーションのような結果になるのだ
絶対に阻止しなければならないのだ

映画としては水谷豊と原田美枝子の演技は素晴らしくその後の活躍を十分に予告しているものだ
映像も今村昌平門下生らしいものだ
それぞれに星一つづつオマケだ

あき240