劇場公開日 1974年11月2日

「想うほどの故郷はなかりけり」サンダカン八番娼館 望郷 こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0想うほどの故郷はなかりけり

2023年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

難しい

不幸な激流にのまれて
流れ流れて生きてきた
女性の話を聞きにいく
女性学者。

田中絹代演じる彼女は、
語るのも辛い人生を生きてきて
月並みな言い方をすれば、
それでも心が穢れることはなかったというのでしょうか。

私にはむしろなにかしらの望みをもつこと
それ自体を諦めてしまったがゆえの
つつましさ、清らかさなように
思えてしまって、
そこにいたってしまった生涯に涙が出そうでした。

自分を二度も捨てた日本はすでに故郷ではないのです。
彼女にとって故郷とは
母の存在に他ならなかったのでしょう。
もしかすると、まだ母と呼べる故郷が
かつてあっただけ
幸せなほうだったのでしょうか。
似たような境遇の女性の中で。

まるで大昔の出来事みたいだが
この話のころから
まだ100年もたっていない。
日本自体が激動の時期を過ぎてきたのだな。

こまめぞう