劇場公開日 1952年4月17日

「溝口作品の長周しが、実は、観客に寄り添った作風に思えて…」西鶴一代女 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0溝口作品の長周しが、実は、観客に寄り添った作風に思えて…

2023年7月29日
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鑑賞方法:DVD/BD

溝口映画は「雨月物語」「山椒大夫」「近松物語」
と観ていたが、
それ以前の作品は未鑑賞だった。

この映画は「雨月物語」の1年前に撮られた
作品だったが、私の
主演の田中絹代との出会いは
NHK大河ドラマ「樅の木は残った」の
主人公・原田甲斐の母親役だったが、
その毅然としたたたずまい
が印象に残っていた。

さて、この「西鶴…」、
当時は女性が能動的に生きることが
難しいことだったとは思うが、
彼女も受動的な選択を強いられた結果、
全てに暗転を重ねる人生に、
なかなか正視するのも辛かった。

これ程の悪いスパイラルの人生模様は、
本来は逆御都合主義的展開に感じても
不思議ではないのだが、
そこには、社会格差や上流階級の身勝手さ、
また拝金主義など、
当時の暗黒面が散りばめられ、
御都合的には感じなかった。

さて、今回の鑑賞を通じて、
溝口映画の長廻しが、
この作品により深く浸るべく、
観客の鑑賞を手助けしてくれる装置に
なっているのではないだろうか、
との気付きにつながり、
昨今の場面展開の早い作品では失われた、
観客に寄り添った作風ではなかったのか、
との想いにも至った。

それにしても、この作品の原作は、
井原西鶴の「好色一代女」ということだが、
内容は当時の社会状況に翻弄された
ある女性の一代記に過ぎず、
何をもって“好色”なのか、
現代と当時の認識の違いなのか、
または、単なる言葉の意味する違いなのか、
私には分からないままだ。

KENZO一級建築士事務所
talismanさんのコメント
2023年7月31日

KENZOさん、こちらこそでございます。山田五十鈴と京マチ子が大好きで、あれ、あともうお一方居ます。誰だっけ?思い出したら書きます。今後ともよろしくお願いいたします!

talisman
talismanさんのコメント
2023年7月30日

長回しとかカメラについてよくわからなくて、細かいこととか好きな文楽に近づけて見るのが精一杯でした。仰るとおり、どこが「好色」?と思いました。男の好色とは質も意味も違うねん!と思いました

talisman