黒の試走車

劇場公開日:

解説

梶山季之原作のベストセラーで同名小説の映画化。「雁の寺」の舟橋和郎と石松愛弘が共同で脚色、「爛」の増村保造が監督した産業スパイもの。撮影は「黒蜥蜴(1962)」の中川芳久。

1962年製作/94分/日本
配給:大映
劇場公開日:1962年7月1日

ストーリー

ハイウェイを突ッ走る覆面車がカーブを切ったとたん、横転して炎に包まれた。翌日、自動車業界紙は、「タイガー試作車炎上、新車生産計画挫折か?」の記事を写真入りで報道した。タイガー自動車では、競争会社ヤマトに試作車パイオニアのテストが事前に洩れ、写真まで撮られたことが問題になった。今後の対策として小野田企画部長は朝比奈部員らと協議、スポーツ・カーのパイオニアを大衆車のように見せかける偽のデータを作り、敵方ヤマトを混乱させようと図った。またヤマトの馬渡企画本部長がバー「パンドラ」の常連と知るや、朝比奈は恋人昌子を女給として勤めさせ、馬渡の身辺を探らせた。あらゆる手段で資料を集めた結果、ヤマトでも秘密裡にスポーツ・カーを製作中であり、しかもタイガーがイタリアのデザイナーに依頼して作らせたデザインまで盗まれていることが判った。こうして、デザインと車種の競争は価格の競争に変った。朝比奈の頼みで馬渡のホテルを訪ねた昌子は、新車に関する重要書類を盗み出したが、貞操を奪われた。高価な代償のおかげでタイガーはヤマトを敗った。勝利の喜びにひたっているとき、パイオニア第一号が東海道本線の踏切で急行列車に衝突、しかも乗っていた芳野という男が車の故障と証言したため、タイガーは苦境に追い込まれた。朝比奈は苦心の末、タイガーの秘密をヤマト側に洩らしたのが平木企画第二課長だとつきとめた。彼はヤマトの馬渡本部長に買収されていたのだ。馬渡は列車妨害の罪に問われ、ヤマトを辞任した。事件が解決し、パイオニアの売れ行きは上昇した。企画第一課長の内定をうけた朝比奈は、会社に辞表を出すと街に飛び出し、傷心の昌子の許へ走るのだった。「現代に生きられなくてもいい。俺は自分のために生きたい」と叫びながら……。

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映画レビュー

4.5映画評論家“白井佳夫氏”の解説

2022年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

映画評論家“白井佳夫氏”がテレビ「日本映画名作劇場」で解説していた録画が残っていたので、その一部を御紹介します。
『今夜は増村保造監督作品「黒の試走車」をご覧いただくことにしましょう。これは昭和37年「椿三十郎」「ブルーハワイ」などが公開された年に作られた大映東京撮影所作品です。梶山季之の出世作のベストセラーを石松愛弘と舟橋和郎が共同でシナリオにし、「曽根崎心中」の増村保造監督が映画化したものです。産業スパイとか企業の謀略とか、こういった問題を初めてドラマの中に持ち込んだこの作品、叶順子、田宮二郎、高松英郎などを主演にして、増村保造監督が、日本的なハードボイルドタッチとでも言いたいような、ダイナミックな演出で映像化しています。当時この作品のチーフ助監督だった大映本社の崎山周さんに窺いましたところ、増村監督は画面の構図を決めるのは監督の責任だと言うヨーロッパ流の考え方で、あらゆるショットを自分でキャメラを覗いて演出したそうです。その辺が増村保造の爽快な映像の秘密なのかも知れません。』

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papatyan

4.0高度成長期の車産業がよくわかります

2020年9月7日
iPhoneアプリから投稿

多分、トヨタと日産のことなのかなぁ。。。と。

今でもゴーンさんの事で話題になってるけど

昭和40年代の会社人間の人達の事がよくわかります。

時代背景や、街並み、服装、面白かったです。

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花

4.5ライバル企業2つのスパイ合戦や推理はハラハラし非常に楽しい。また企...

2018年4月15日
iPhoneアプリから投稿

ライバル企業2つのスパイ合戦や推理はハラハラし非常に楽しい。また企業に尽くすことは本当に幸せなのかという幸福論を突きつけられる。約55年前の作品にも関わらず現代社会の問題も捉えていて全く色褪せていない傑作であり必見。

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fgh

4.5面白かった。

2017年4月16日
PCから投稿

面白かった。

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トグサ
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