劇場公開日 1956年7月12日

「邦画というより昔のイタリアかフランス映画のよう」狂った果実(1956) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0邦画というより昔のイタリアかフランス映画のよう

2013年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

総合:75点
ストーリー: 75
キャスト: 65
演出: 65
ビジュアル: 65
音楽: 65

 石原裕次郎の初主演作にして大人気に火が付いた作品だそうだ。だがそんな彼の気障な科白の棒読みぶりにまず驚いた。相手が喋り終えてから次の人が喋るという順番を必ず守る不自然な演出にもすぐに気が付く。正直演技が上手いとは思えなかった。
 制作は1956年だそうで、当時の東京周辺の学生の殆どは風呂なし便所なしの部屋で食うや食わずの貧困生活を送っていたことだろう。それなのにここでは高級外車や船を乗り回し連日パーティをしながら女遊びをしつつ、誰かを批判し喧嘩を売り退屈しのぎをする。とても日本とは思えないような現実感がないその生活は、邦画というよりも昔のイタリア映画かフランス映画の、地中海で退廃生活を楽しむ貴族の生活を見ているようだった。調べてみるとむしろこの作品がフランス映画に影響を与えたということだそうで、もしそうならば随分と先端を走っていたことになる。
 公開当時にこれを見た現実社会に生きる人々はどう思ったのだろうか。これが今でも語り継がれているということは、憧れをもって本作品を迎え入れたのかな。金持ちのドラ息子の豪華な生活はともかくとして、現代的な感覚から見ると個人的には暴走する若者のその刹那的な雰囲気が懐古的で逆に新鮮に映って面白かった。現実社会に根差した生活からは対局にある、自分たちが作り出した退廃した基準に染まってしまって暴走して自ら堕ちていく姿は儚くも衝撃的。自分は好きな話だった。

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Cape God