劇場公開日 1978年2月11日

「ヒロインにミステリー」女王蜂(1978) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヒロインにミステリー

2021年1月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

市川崑監督、石坂浩二主演の金田一耕介シリーズ第4弾
大ヒットが続いたので次回作を要求されるのは仕方ありません
とは言えど、流石に監督も飽きがくる
もうこれで打ち止めですよという監督からのメッセージが随所に見え隠れしています

過去3作の犯人役の超一流女優の揃い踏み
常連俳優はもちろん、過去作に出演した俳優も勢揃いしています
これはつまりカーテンコールです

ラストシーンも等々力警部は「また会おう!」と去っていくわけです

獄門島のような犯人を変更するような大胆というより無理矢理な改変はなく、むしろ映画化にあたって原作を上手に整理してあり見事だと思います

ただ原作で印象的であったテニスラケットと月琴との相似した形状を、意識してはいないのは少々残念
まあ意味はないので取り上げないのは当然なのですが、そこに横溝世界の空気が淀んでいるものであったのにと思うのです

本作のタイトルは原作通り「女王蜂」
ですからヒロインが女王蜂であるほどの圧倒的な美貌でなければなりません
それもその女性のためならば、何人もの男が進んで命を投げ出すほどのものが必要なはずです
しかし抜擢されたヒロイン中井 貴惠にそこまでの美しさもオーラもないのです
これでは映画の出来も心配されます
そんなことは市川崑監督ならば百も承知
釈迦に説法のようなもの
市川崑監督がそれでもこのひとを配役したのは何故なのでしょうか?

カネボウ化粧品が彼女をキャンペーンガールに抜擢したから?
本作はそのタイアップ作品だから?
現代から想像もつかないでしょうが、当時カネボウ化粧品は資生堂に肩を並べる超一流化粧品メーカーとして巨額の広告宣伝費をもって多くのメディアで大量のキャンペーンをシーズンごとに行っていたのです
そんな大人事情なのでしょうか?
しかし、それで市川崑に強要できるものなのでしょうか?
そもそも映画ヒロイン決定とキャンペーンガールの決定の後先はどちらが先だったのでしょうか?
それとも14年前に突然の自動車事故で亡くなった大スター佐田啓二の娘であったから?
そんなことだけで?

これこそ「口紅にミステリー」どころか、ヒロインにミステリーです

もしかしたら市川崑監督にとってヒロイン智子は女王蜂では無かったのかも知れなません

本当の女王蜂は誰かというと、東小路隆子旧伯爵夫人です
馬丁のエピソードは、犯行動機を補強するだけでなく彼女が本当の女王蜂であるということを明確にするものだと思います
何度も繰り返し挿入される白馬の映像はそのためのものでした

それ故に東小路隆子は自分が女王蜂であったことを悟り、そのために犠牲となったヒロイン智子に詫びるのです

そしてもう一人
ヒロインの母琴絵です
彼女を演じた萩尾みどりこそ、女王蜂の美貌を備えていました

女王蜂の威厳と風格は高峰三枝子が、美貌は萩尾みどりが、それぞれ受け持っていたのです

ヒロイン智子は単なる狂言わましにすぎなかったのかも知れません

しかし凡人である自分には、やはりヒロイン智子には圧倒的な威厳と美貌を兼ね備えた女優が演じて欲しかったと思います

とはいえ、それに相応しい当時20歳前後の若い女優は誰かと問われると、名前が出てこないのです

市川崑監督も同じ悩みに至ったのかも知れません
いやもしかしたら、監督は萩原みどりの一人二役を考えていたのかも知れません
ヒロインにミステリーです

あき240
megane-koubou nakajmaさんのコメント
2022年1月24日

原作は卓球のラケットではなかったかしら?

megane-koubou nakajma