劇場公開日 1977年8月27日

「犯人変更は興行的には成功していると言えても、映画としてはとても成功とは言い難い」獄門島(1977) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5犯人変更は興行的には成功していると言えても、映画としてはとても成功とは言い難い

2021年1月14日
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市川崑監督、石坂浩二主演での金田一耕介シリーズの第3弾

横溝作品のなかでも人気の高い作品で、特に鐘を使ったトリックは有名
「きがちがうがしかたない」もまた有名

市川崑監督は第3弾も続くとは考えてもいなかったという
流石に新味がだせない
早い話がマンネリになってしまう
それを平然とやれる監督とそうではない監督がいるが、市川崑監督は後者だ

原作の発表順は、本陣殺人事件、獄門島、八つ墓村、犬神家の一族、女王蜂、(中略)、悪魔の手毬唄、病院坂の首縊りの家と続く
つまり第3作は原作の執筆順とは逆に映画化することになるわけだ

監督も東宝もシリーズになるとは考えてもいなかったのだ
執筆順に撮っておれば、各作品が単独であっても自然に展開が作品ごとに発展させてくいことができたはずだ
しかし遡っていく形になってしまった
だから、あの手この手で新味をだす工夫を考えなければならなくなった
その無理が本作の内容に作用した
ツケがわまったと言うべきか

あの手この手では足らなくなってしまった
それが犯人変更になってしまったということだ

原作と違う犯人というのは、確かに大変に話題を呼ぶやり方だ
しかし興行的には成功していると言えても、映画としてはとても成功とは言い難い

ピーターは素晴らしい存在感で原作にある淫靡さを示したのだが、竜頭蛇尾の出番に終わった
まだまだ足らない、もっともっと濃くても良かった
そこに本当の本作の成功の答えがあったのだと思う

それでも内容は濃く見応えたっぷり
原作のエキセントリックな殺人現場が忠実に映像になっているだけでも、ファンなら満足できるだろう

あき240