劇場公開日 1999年6月5日

「菊次郎は形を変えて現れた救世主だったのかも知れません」菊次郎の夏 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0菊次郎は形を変えて現れた救世主だったのかも知れません

2020年6月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

処女作は他人の脚本、急遽監督として撮ったもの

第2作、3-4x 10月は、監督として撮りたいことのショーケース兼実験作

第3作、あの夏、いちばん静かだった海
第4作、ソナチネ
第5作、みんな〜やってるか!
第6作、キッズ・リターン
第7作、HANA-BI

ここまでは、第2作の3-4x 10月でやってみせたショーケース的な要素をそれぞれ展開した作品だったように思います

本作は、いよいよ北野武監督が初めて取り組む要素に挑戦している作品だと思います

子役を使って、人間性と成長の物語を自分が語れるのか、監督が自分へ挑戦をしているのだと思います

成功したと思います

久石譲の音楽をどう使うかまで最初の構想に入れて注文していたそうです

正男の見る二つの悪夢のシーンは特に心に残る素晴らしいシーンでした
麿赤兒の素晴らしい舞踏、美しい幻想的なセットと照明と撮影
ため息がでました
天狗のダンスも見事でした

正男と菊次郎の二人共に旅を終えて成長して、何かが変わっています
ロードムービーとしての本質を見事に達成していたと思います

正男の青いナップザックには天使の羽の飾りが付いています
ラストシーンで隅田川の橋を走って渡る正男の背中にあり天使が飛び立とうと走っているかのようです
旅で貰った天使の鈴が音を立てています
ちいさくとも教会の鐘です
彼の悲しい気持ち、寂しい気持ちは、救われて天上に登って行ったのです

菊次郎は形を変えて現れた救世主だったのかも知れません

素直に感動しました

あき240