劇場公開日 1960年1月15日

「階段を登る、それはステージを変える行為」女が階段を上る時 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0階段を登る、それはステージを変える行為

2020年1月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

傑作です
重い観応えが有りました
劇中で夕暮れ時の銀座が写ります
本作から60年経っていますが今と変わらない、仕事帰りのビジネスガールと着物姿のプロがすれ違う光景です

夜のお店は疑似恋愛を楽しむお店です
もっともそれを楽しめるのは重役以上で、若手社員は接待のお付きに過ぎません
こうしたお店で接待の交際費で場数を踏んで、男を磨く事が出来た男が重役になれる
そうしたものの筈でした

でも本作を観ると60年前からお偉いさんも、こんなていたらくだった訳です
男はいつの世も駄目です

男も女も両方がこれは疑似恋愛でゲームなんだとわかった上でゲームを楽しむ
節度をお互いに守ることでゲームは成立しているのです
言い方を変えれば、建て前を守りとおせる男であるのか、女であるのか試されているとも言えます

そのゲームのルールをわかった上で、女性に気遣いと真心を示すことができるか
女性はそれを知った上で男のプライドを理解できるのか
それが夜の街での修行なのだと思います
それが出来ない男はやはり仕事でも脱落していくものなのだとやはり思います
女も然りです

シングルマザーがホステスにいることを示すシーンがあります
今と何も変わりはしません
子供を抱えて昼の仕事ではお金がかかる年頃の子供を養えない現実はあるのです

雇われママの圭子もつらい思いを重ねて修行しています
最高につらい仕事です
だから高給なのだと思います

階段を登る、それはステージを変える行為
女が別の女に変わるところ

ラストシーンは主人公の圭子がまたひとつ階段を登ったのだということだと理解しました
彼女はきっと銀座で成功していくのでしょう

高峰秀子36歳、役の圭子は30歳の設定です
まだまだ十分に若く美しいのですが、役の年齢よりも実年齢が上のところがまた、女性の曲がり角である年齢を迎えているという説得力を増していると思います

黛敏郎による音楽が秀逸です
まるでフランス映画のような趣があり本作の雰囲気を高めています

あき240