思えば遠くへ来たもんだ

劇場公開日:

解説

九州からみちのくの城下町にやってきた教師と、落ちこぼれ生徒たちとの心のふれあいを描く。脚本は「遥かなる山の呼び声」の朝間義隆と「俺たちの交響楽」の梶浦政男の共同、執筆、監督は「俺たちの交響楽」の朝間義隆、撮影も同作の吉川憲一がそれぞれ担当。

1980年製作/93分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1980年8月2日

ストーリー

青田喜三郎は九州から秋田県角館東高校に臨時教師としてやってきた。越後屋という呉服屋の二階に下宿した青田はその店の主人の徳治や奥さんのあや、一人息子の茂の暖かい歓迎を受けた。秋田弁と九州弁のズレでとまどい、生徒たちからも馬鹿にされていた青田だが、彼の柔道の腕前を見て、生徒たちも信頼しはじめた。青田は角館の女子高の先生で聡明な美人の清水鹿子を密かに慕っていたが、そのことを感づいた茂が、青田の名前でラブレターを鹿子に出してしまい、二人の関係はご破算になってしまう。青田が身体の調子の悪いとき、鹿子は見舞いに来てくれたのに……。それから間もなく、根性というあだ名の生徒が停学処分になり、その後も登校して来なくなった。青田は何度も根性の家に足を運び、そのかいがあってか、根性は学校に戻った。そのことを一番喜こんだのは、根性の姉の百合子だった。一方、青田は百合子の白鳥のような美しさに一目惚れ。青田の弟に対する思いやりに感激した百合子は彼のデートの誘いに喜んで応じた。デートの席で、青田は百合子から、お見合を勧められ、迷っていると相談を受ける。何も言えない青田。それからしばらくして彼女は嫁にいってしまった。「おいは、アホーだった」と自分を責める青田。茂も臆病な少年だった。従姉妹の道子が茂を好きだというのに、彼は彼女の気持を分ってやろうとしない。青田は「女にはもっと積極的になれ」と茂に言うが、鹿子にも百合子にも勇気を出せなかった自分が一番ダメなのかもしれないと思う。秋田に来て一年が過ぎようとしていた。その間、青田は何度も学校を辞めようと思ったが、その度に、生徒たちのことを思い、ふみとどまった。他流試合では、いつも投げ飛ばされる柔道部の部員たちを、今度はなんとか予戦を通過させてやりたいと思う。素晴らしい桜の季節がそこまでやってきていた。今日も、青田は部員たちと猛練習をやっていた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

2.5秋田の城下町を舞台にした学園青春コメディに主演する武田鉄矢の個性

2022年7月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

3年前の「幸せの黄色いハンカチ」で武田鉄矢というフォーク歌手が、山田洋次監督によって演技者の才能を見出された時は、山田監督の慧眼とそれに応えた武田鉄矢独特の個性の両方に感心せざるを得なかった。彼の持つ洗練されていない田舎人間のしぶとい人生観と直向きさ、そして教育論を語る啓蒙メッセンジャーとしての両面が、今後の日本映画にとって一つのこころの安らぎを感じさせてくれればいいのではないか。
今度の朝間義隆脚本・監督による「思えば遠くへ来たもんだ」は、テレビドラマ『金八先生』で好評だった武田の人気に肖る形の作品になっている。それでも武田鉄矢の個性を認めた上で観れば、充分楽しめる。ただ残念なのは、秋田の城下町を舞台にした基本シナリオから、そこで繰り広げられる生徒と先生の交友が在り来たりのプロセスでしかない点である。これ迄の日本の喜劇映画のパターン化したものを踏襲している。つまり地方文化に対する今日的な作者の思い入れや、教育問題への提案などがあっさりと無視されているのだ。
人間の行為を探る武田鉄矢の、どこか欲求不満な人間の意地。しがない男のユーモアを持ち、同時に真面目過ぎるくらいのシリアスな側面も持つ。それらが、平和で平凡な物語の中でささやかに輝きながら消えていく。もっともっと挑戦して練られて然るべき脚本の映画である。

  1980年 8月12日  銀座文化1

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Gustav

4.5けつかグリグリか

2018年12月14日
iPhoneアプリから投稿

良い先生、良い時代。

基本は丁寧で穏やかな口調なんだけど、ちょっとでも舐めた奴に会うとブチギレる熱血教師。短気を筋肉でくるんだような男でしてと自分を語るが、曲がったことが大嫌いな正義漢の人情ドラマ。
ちょっとフーテンの寅さんぽい恋愛模様もある。不登校の生徒マツオを学校に来させるように柔道を通じて説得する。
マツオの美人姉(あべ静江)が感謝して青田と良い感じの関係になるが、見合い話からの青田の消極的な態度に恋は終わってしまう。
見合いを止めて自分と一緒になってくれと言って欲しかったはず。どうか幸せになってくださいと言われたあとの表情がせつない。

短い時間の中、たくさんいろんな事が起きて全然飽きない。
しかしアイツも人類として着々と進歩してきたなぁ。
男女交際は襖を開けてせんと誤解される。とかコミカル描写も多数あっておもしろくみれた。

俺には柔道がある。みたいなラストだったけど、まだまだ続いていく内容。序章といってもいいくらい。まだ清水先生がいるし。
主題歌が良くて心に残った。この曲と少年期は本当に素晴らしい。

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