劇場公開日 1952年6月12日

「成瀬巳喜男監督の代表作は、本作3年後の1955年の「浮雲」とされるようですが、本作こそ代表作にふさわしい作品と思います 大好きな作品です」おかあさん(1952) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0成瀬巳喜男監督の代表作は、本作3年後の1955年の「浮雲」とされるようですが、本作こそ代表作にふさわしい作品と思います 大好きな作品です

2022年10月18日
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鑑賞方法:VOD

昭和27年、1952年6月公開、白黒作品

場所は六郷辺りのようにみえます
お話しは小学生の作文コンクールの優秀作品を脚本家の水木洋子がまとめたもの

なので、元の作文はきっと小学生3年生くらいの次女の則子のものなのだとおもわれます
だって年子はラストシーンでは18歳なのですから

それを大変に上手く姉の年子からの視点に転換して、香川京子が演じる長女年子が主人公になっています
正に脚本家の腕の冴えだと思います

水木洋子の脚本は、本作のあと成瀬巳喜男監督、今井正監督に数多く採用されていくことになります

田中絹代は当時43歳
身長は152センチ
小さくて細くて、チョコマカと動きます
彼女は絶世の美人ではありません
肉感的でもなく、性的アピールは皆無です
まして本作ではもうアラフォーです
貧しい家庭の母として、粗末な衣服ばかりで、化粧も髪型も構っていられないという姿で登場します

でも彼女の人間性の中にある女性は間違いなく絶世の美女なのです
かわいらしく可憐で抱きしめたくなる
そのような女性が内面にいるのです
外見ではないのですからいつまでも歳を取らないのです
その美しさが彼女の演技によって内面から表出してくるのです

結婚するならこのような女性です
今なら断言できます

田中絹代の演技のすごさ、成瀬巳喜男監督の演出の冴え、香川京子の輝くような清潔感溢れる可愛らしさ
子役二人の自然な表情
70年前の日本の光景も興味深く楽しめます

成瀬巳喜男監督の代表作は、本作3年後の1955年の「浮雲」とされるようですが、本作こそ代表作にふさわしい作品と思います
大好きな作品です

あき240