劇場公開日 1955年3月18日

「ギリギリのラインを快走する力作」愛のお荷物 エイブルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ギリギリのラインを快走する力作

2018年10月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

名家に起こる、名家らしからぬ平凡さゆえ切実になってしまう問題を作品の骨組みにした時点で目に新しいが、それが川島節のテンポの喜劇でやるのだから、それはたのしい。
皮肉家精神で描くと、社会風刺に終始してしまいがちであろうが、本作、デリカシーが求められるテーマもある。タイトルからして、現代では必ず物言いがつきそうなわけだが、当時の情勢を鑑みても尚、お洒落な川島雄三がヤボに陥ることはなかった。
縦横無尽にカメラが飛び回り、物語とセリフが空転がちに駆け巡ってドタバタ、だけど切実なところを守りきって、社会風刺がテーマ、と敢えて捉え違えてみても、粋な作品にまとまっている。
川島雄三特有の、大きな視点から細部へテンポよく入って行く、構成が光っている。
また、演出の使い分けが、小まわりが効いている。ギャグのアホらしさとピリッと舌先に滲みる哀愁と、権力主義者の浅ましさはしっかりと浅ましく描いて強烈。

この作風は直弟子・今村昌平は無論だが、現代では原田眞人に受け継がれているように思える。

エイブル