劇場公開日 2007年9月29日

エディット・ピアフ 愛の讃歌 : インタビュー

2007年9月25日更新

フランスの国民的歌手エディット・ピアフの波乱の生涯を描いた「エディット・ピアフ/愛の讃歌」。本作でタイトルロールを演じたマリオン・コティヤールは、「世界でいちばん不運で幸せな私」「ロング・エンゲージメント」といった本国フランスのヒット映画に出演する一方、「ビッグ・フィッシュ」などのハリウッド映画にも顔を出すフランス期待の若手女優だ。そんな彼女に話を聞いた。(聞き手:編集部)

マリオン・コティヤール インタビュー
「人生を豊かにするためには、いろいろなことがないとつまらないわ」

外国語映画というハンデを乗り越え、オスカーノミネートに期待がかかる
外国語映画というハンデを乗り越え、オスカーノミネートに期待がかかる

■エディット・ピアフへの見事な変貌

マリオン・コティヤール
マリオン・コティヤール

本作でのピアフへの“成りきり”ぶりは、まさにオスカー級と言っても過言ではない迫真の演技で、彼女の代表作となるのは間違いない。しかし、マリオン自身は「実はこの映画に出るまで、ピアフのことはあまり知らなかった」と言う。「だから、撮り終わって彼女に対する思いが変化したというよりも、撮影を通して全てが発見だった。でも、彼女の魅力とは何だったのだろうと今振り返って考えると、それは彼女の情熱や、人々への愛情、感動を人と分かち合おうという思い、そして偉大な才能……そういったところかしら」

ピアフは47歳で他界したが、晩年は20歳は老けてみえる外見だったという。その様子は劇中でも再現され、40代後半とは思えない、背中も丸まった小さな老女のような姿で驚かされる。30歳で身長169センチのマリオンの見事な“変装”だ。

「老けメイクの部分は、ラテックスというゴムを顔に貼り付けて、何時間もかけてメイクアップアーティストが皺を描き込んでいたの。その作業を毎朝していたのよ。二重あごや頬が垂れている部分は、また別のものを付けて、とても重いマスクをつけて演技していた感じね。背の高さはもちろん映像のトリックで、共演者が靴の中敷に入れ物をしたり、厚底の靴を履いたりして背を高くみせたり、逆に私の全身を映さない場合は、私が靴を履かずに裸足で演技をしていたりね」

■感情、歌――困難だった撮影シーン

歌のシーンは技術的にも困難を要した
歌のシーンは技術的にも困難を要した

外見の“変身”ぶりも見ものだが、それ以上に気性の激しいピアフの感情にシンクロしているかのような演技に圧倒される。撮影中は「テイクが終わってスタッフが準備をしている間も、自分に戻ることはほとんどなかった」と語るマリオン。「それをする必要もあまりないと思ったから。今回は、ともかく“本物”を目指そうとしていたけれど、そうしていると、自然と彼女になっていて自分に戻る必要がないという感覚があったの」

苦労したというのは、歌のシーン。一部マリオンが歌っている部分もあるが、大部分はマリオンの演技に、ピアフのレコードをあわせている。しかし、その姿と歌声は完全に一致し、“口パク”など全く感じさせない。「プレイバックのシーンはとにかくテクニックが必要で、撮影の中で一番大変な部分だったわ。準備も含めてね。まるで精密時計のように演じなくてはいけなかったから。何度も何度も彼女の歌を聴いて、息遣いや間の取り方を、自分の中でそれが自然になるまで時間をかけて練習したの」

■映画を撮り終えて

激動の47年を生き抜いたピアフ
激動の47年を生き抜いたピアフ

こうして出来上がった映画だが、本人は「冷静に見ることはとてもできなかった」と語る。「今回に限らず、どの作品にも言えることだけど、最初は“(自分の演技に)好きなところがひとつもない!”という風に見てしまうの。2回目に見ると少し客観的に見られるけど、この映画の場合は、撮影中とてもディテールに気をつけて演技していたので、そのディテールひとつひとつをチェックしていったという感じ。とても不思議な鑑賞だったわ」

悲惨な幼児期、華麗なる歌手生活、世紀の大恋愛と愛する人の突然の死――。穏やかとは程遠い、波乱の生涯を送ったピアフだが、マリオンは「人生の一時期でも波乱があり、それを乗り越えなければ、穏やかな人生には到達できないと思う」と、人生観を語る。「誰の人生にも悲劇的なドラマはあると思うわ。最愛の人を失うという経験は、私自身もいつか必ずしなくてはならない。でも、その反面、きっと素晴らしい幸福感を味わえる時もある。私はそのように人生に対する信頼感をもって生きているの。人生を豊かにするためには、いろいろなことがないとつまらないんじゃないかしら」

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