劇場公開日 2007年7月21日

「ガス・ヴァン・サントの幻の長編デビュー作」マラノーチェ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ガス・ヴァン・サントの幻の長編デビュー作

2020年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 映像は白黒。途中に8ミリカメラを手に入れて撮影するシーンがあるのですが、そのフィルムシーンとエンドクレジットの映像だけがカラーといったもの。ポートランドの詩人ウォルト・カーティスの自伝的小説を映画化した作品だ。

 ゲイであるウォルトがメキシコ人青年ジョニーに恋をするストーリーで、ジョニーとは言葉が通じずチグハグな関係を繰り返す。なんとか彼を抱きたいと思いつつも、ジョニーの友人ロベルトにカマ掘られ、「最悪な夜(マラノーチェ)だ」とつぶやくところが面白い。タイトルの意味はここではなく、最後に訪れるのですが、単純なゲイ映画とは思えない奥深いところがある。

 「移民局じゃない」と、メキシカンに警戒される中で必ず発する言葉。それだけ不法移民が多いということなんだろうけど、ろくな仕事にありつけるわけもなく、ヌードダンサー、男娼、そしてヤクの売人にしかなれない現実が物悲しい。それでも自由を求めて国境越えをする彼ら。儚い命を危険に晒してまでアメリカという国にやってくるのです。

 決してプロットを楽しむ映画ではなく、ウォルトの心象風景を繊細に描いた作品。映像の陰影の濃さのためか、ジョニーとロベルトの区別がつかなかったり、切り返しやモンタージュなどという編集を無視するかのような解りにくさもあったけど、嘆きとも思えるウォルトの気持ちが伝わってくる・・・

【2007年11月映画館にて】

kossy