劇場公開日 2007年7月21日

「演奏はアシュケナージですもんね。アニメとしても幻想的!」ピアノの森 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0演奏はアシュケナージですもんね。アニメとしても幻想的!

2008年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

クラッシック音楽がブームになっているとか。
その中で、『モーニング』連載中の人気漫画が映画化されました。
『のだめカンタービレ』にはまった人なら、絶対お勧め!
アシュケナージのピアノも映像にすごくマッチングしていて、1時間40分のピアノの森でのコンサートに入り浸ることでしょう。

 深い森の中、月明かりに照らされるピアノの幻想的で壮大な映像、アシュケナージによる本格的なピアノ演奏も神秘的で、観る人の心に鮮烈な印象を残します。
 もう見ているだけで心が癒されました。マッドハウスが製作を担当しているだけにとても映像が緻密できれいです。

 物語も森の中に置き捨てられたピアノが朽ち果てることもなくきれいなままで、それをなぜか一人の天才少年のみが弾くことができるという神秘的なお話です。
 将来ピアニストを目指して練習に明け暮れている雨宮修平は、コンクールの地区予選を受かりやすくするためだけに地方の学校へ転校したのです。そして毎日過酷な練習の続き。修平は音大での母から押しつけた夢のまま強制されているだけで、ちっともピアノの喜びを忘れていました。
 一方、森のピアノを友として、無心にピアノで遊んできた少年・海にとって、ピアノは生きる喜びそのものであったのです。ふたりがクラスメートとなり海の奏でる森のピアノを耳にしたとき修平は衝撃を受けます。
 何のための音楽なのか。旋律を正しくなぞるだけがいい演奏なのか考えさせてくれるストーリーですね。

 でもいくら天才でも、地道な努力の積み重ねがなければ、うまくいかないこともちゃんと描かれています。海にもうまく弾けない曲ががあったのです。特にショパンは感性だけではだめで指の運動能力をトレーニングする必要があります。海も苦痛に耐えながらショパンが演奏できるまで単純な音階練習を重ねます。その中で海はこれまでバカにしてきた修平が、どんなに大変な練習に耐えてきたのかを知って、練習の大切さを自覚します。

 修平とともにピアノコンクールに出場し、大衆の面前でオフィシャルの演奏をする羽目になった海は、緊張してピアノが一瞬弾けなくなります。
 そのとき思い出したのが師である阿字野先生の「集中しろ」の一言。よそ行きで自分の音を見失っていた海は、コンクールから意識を離し、ピアノの森で演奏している普段の自分に戻っていきます。この作品の中でもそのときの音が一番素晴らしかったです。

 海と修平。その二人に込められたメッセージとは、夢に向かう努力の大切さと、その中で、努力のための努力でなくその夢が本当に自分の心のうずきから出ているかどうか。自分らしい夢なのかどうかを伝えてくれます。つらい練習で壁にぶち当たったら、心のうずきに集中しましょう。そうすればきっとミューズの女神さまが微笑んでくださることでしょう。

 ところで、原作が一色まことなので、随所に爆笑するシーン満載です。それにしても凡夫の想像を超えるシーンも多々ありまして(^^ゞ、原作者の想像力の豊かさをひしひし感じました

流山の小地蔵