劇場公開日 2007年4月21日

「レクター博士の誕生」ハンニバル・ライジング bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0レクター博士の誕生

2023年1月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

『羊たちの沈黙』で、猟奇的な殺人鬼として、クラリスと対峙したハンニバル・レクター。彼が何故、残忍なシリアルキラーとなったのか? 殺人において頬肉に拘るのか? そんなレクター博士に纏わる誕生秘話を、幼少期からの耐え難い体験をもとに描いている。

第2次世界大戦の中、銃撃により両親が殺され、妹と共に、血肉飢えた野獣の様な敵国戦士の捕虜となった幼きレクター。食料も底を尽き、野獣たちの食料として目を付けられた妹は、無残にも彼らの餌食となった。妹への復讐心だけで、生き延びて成長したレクターが行き着いた先は、日本人の美しき未亡人の叔母・レディー・ムラサキの所。

そして、レクターは、叔母の所で暮らしながらも、妹を殺した者達を探し出し、一人また一人と、レクターの残虐な復讐劇を始める。その一方で、レディー・ムラサキへの淡い恋心も芽生えていくが、最後に、「愛するに値しない」と断罪されたのも、その後のレクターの闇の心を増長させる、契機となったのだろう。

戦争は、これほどまでに人を邪鬼とするのか…。妹を食べた戦士も、飢餓の中で生きる為の究極の選択。また、レクター自身も、その時のトラウマと復讐心から残忍な殺人鬼へと落ちていく。こうした国家規模の殺人である戦争が、今も尚、まかり通っている現代。レクターの様な殺人鬼を、今もどこかで生み出しているのかもしれない…。

37歳の若さで亡くなった主役のギヤスパー・ウリエルは、冷徹で、残忍な中に、孤独と哀愁を抱えたレクター役を、見事に演じている。また、レディー・ムラサキ役のコン・リーも、謎めいた魅惑的な東洋人を演じていたが、日本人という設定ならば、日本人の女優を使って欲しかったし、小雪あたりが適役だと思った。

bunmei21