乱のレビュー・感想・評価
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規格外
ロケにしろセットにしろ何もかんもがぶっ飛んでてとにかく凄い。あの城つくってしかも炎上させんのかよと。
シェイクスピアをベースにした舞台仕様の大袈裟な演技だけがどうも馴染めない。
しかし、あの音はすごく効果的でした。
20世紀を代表する名画
黒沢映画が世界的に高い評価を得ていることは勿論知っていた。しかし敢えてDVDを借りて観るほどでもないだろうと高を括っていたのが正直なところだ。それが大きな間違いであったことがこの映画を観てよくわかった。
4Kデジタル修復版で仲代の凄みのある表情を余さず観ることができたのは非常にラッキーだと思う。
俳優陣はいずれも達者な演技振りで、寺尾聰の太郎、根津甚八の次郎は、気の弱い凡人が強烈なエゴイストたちに振り廻される情けない姿を遺憾なく演じきっていた。井川比佐志が演じた次郎の筆頭家臣の鉄(くろがね)修理は豪胆な武将の存在感にとても重味があった。
凄かったのはやはり主演の仲代達也と原田美枝子だ。ふたりとも怪演という言葉が相応しい大迫力の演技だった。この二人が演じた秀虎と楓の方の強烈な思いがストーリーをぐいぐいと引っ張っていく。歴史は構造的に作られる面もあるが、こういった強烈な個性によって動かされることもあるということを改めて感じた。
そしてピーターが演じた道化師の狂阿彌。権力に縛られない恐れ知らずのこういう存在を登場させることで、権威を相対化し、物語に奥行きを与えている。ピーターはほぼ出ずっぱりの大活躍だった。
性格悲劇という考え方を16世紀末の演劇の世界に持ち込んだシェークスピアは、性格の齎す益と害が、権力者においては多くの人々の命にかかわる一大事であることを数々の作品で表現した。
黒沢監督はそのひとつ、リア王をさらに大きなスケールで演出し、必然と偶然、同盟と裏切り、誠実と欺瞞を対比させつつ、壮大な人間ドラマに仕立て上げた。いま観てもまったく古臭さを感じさせない。人類普遍のテーマを表現した映画はいつまでも新しいのだ。
音楽は武満徹。私には「死んだ男の残したものは」(詞:谷川俊太郎)の作曲家として胸に刻まれている天才である。ティンパニと小太鼓大太鼓を効果的に使って場面ごとに迫力のある印象を残す。武満の曲の指揮が岩城宏之で、いまとなってはビッグネームばかりのキャストとスタッフだ。
20世紀を代表する名画のひとつである。
今となってはもう作れない映画
劇場で見たかった映画を観られたことに感謝したい。
面白く、素晴らしい映画である。黒澤明の良さに気付くまで、随分時間が掛かったが漸く理解出来る時期に至った。残念ながら、この先、これほど予算と時間を費やして作る邦画は無いだろう。巨匠に対する世界からのリスペクトがあってこそ、製作出来た最後の大作の一つだろう。テレビで培われた感性はどれだけのモノを作れるか?もはや何も期待しない。ミニマルな佳作は出るだろうが、資本を必要とする大作を作るには時代が余りにもロマンを排し、現実的になり過ぎている。old days,but good daysってところか…
心の失明
権力への欲望と執着、逆心、猜疑心、虚栄心など、真価を曇らせる人間の愚かさを、壮大な時代劇で描いております。騎馬隊は迫力ありました。
繰り返し大量に流された血の上に成り立つ権威という点は、戦国時代という設定故に特に強調されていたように思えます。
太郎(黄色・一)、次郎(赤色・二)、三郎(青色・三)と衣装と旗で色分けしているので、とても分かりやすいです。
残念なのは、大殿がゾンビにしか見えなくて何度も吹き出しそうになったこと、血液がペンキのように赤過ぎること、核心を突く台詞を放つ道化師役が、戦国時代としてはあまりに無礼で浮いてしまったことでした。
ストーリーはリア王なので、詳細は省くとして、とにかく画像というか、...
ストーリーはリア王なので、詳細は省くとして、とにかく画像というか、色の美しい映画だった。シェイクスピアの救いの無い物語を、色彩鮮やかに描く。仲代達矢も凄いが、原田美枝子の演技はマジ怖かった…。あ、ちなみに僕はピーターの演技が鼻につきました(笑)。これさえなければ…。
黒澤映画。キレイ
2〜3回くらい見たかな。
ストーリーもわかりやすい。赤青黄色。出演者も豪華で時代劇好きにはナイス。
かなりの大作だが、舞台は戦国時代の中部地方の山間かな。馬や騎馬が沢山出てくるので迫力が凄い。 今じゃここまで本格的な時代劇を作る人がいないんじゃ無いか?
イマイチなイメージの寺尾聡を使う以前の作品だと思う。良い。
大掛かりな哲学的舞台芸術のよう
総合80点 ( ストーリー:90点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:80点|音楽:70点 )
かなり金のかかった大掛かりな作品である。脚本も洗練されていて、哲学的・芸術的な香りがする。戦国乱世の厳しい世の中に浮かび上がる人間の性(さが)を切り出して、愚かさや野望や恨みが引き起こす乱とその悲劇を美しく物悲しく虚しく描いている。
だが映画作品なのに何か説教くさいというか説明っぽい科白回しが気にかかる。シェイクスピアの「リア王」を基本にしているというせいだろうか、演出が映画というよりも舞台芸術のようなのである。私は科白をしっかりと覚えて今情感を込めてしゃべっていますよ、そんな印象を受けてしまって、映画としてはそこが気にかかって入り込めないことがあった。
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