劇場公開日 1999年12月11日

「俗物からの解放」ファイト・クラブ asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5俗物からの解放

2022年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

暴力的なネーミングにブラッド・ピットのキマッたビジュアル。監督は鬼才:デヴィッド・フィンチャーに、脇役はエドワード・ノートンやヘレナ・ボナム・カーター、ジャレッド・レトと聞けばくせ者ばかり。以前から気になっていたエンタメ感が前面に出ているタイトルをついに拝見。

 最初は「どこにエンタメ要素が?」と思いつつ観ていたが、ブラッド・ピットが出てきてやっと香りが漂ってくる。そして訳も分からず主人公(エドワード・ノートン)とブラッド・ピットの殴り合いになったところで面白さに気づく。

 社会で抱えてしまうストレスを、暴力的に発散している。

 日々溜まっていく、しかし物欲や効率の良い生活では晴らせない鬱憤を拳で吐き出す。そして殴り終えた後の満足感。もう物欲・金欲は関係ない、そこに思いを巡らすことがないほどの満足感なんでしょう。現代社会で物欲・金欲なくして生きれない。ない人などいない。なぜなら現代社会で必須アイテムだから。しかしそれゆえにストレスを抱えてしまう。そんなことよくある話。それを全て暴力で、力で解決しよう。

なんとシンプルな発散方法か!

理のある人なら“暴力で発散するなど”と避けてしまう、と言うよりお縄にかかる事案。でも殴りたい衝動を抑えてストレスを抱えるより、殴って発散すりゃ良いやないか。それによっていろんなストレスが発散され、俗物から解放される。そして真の自由を得ようとしるこの展開。

現代社会に対するアンチテーゼ。この考えは個人的に非常に面白い!

だが、後半の展開は少々過激すぎないか。2人の殴り合いの意義を見出した人たちが集まり「ファイト・クラブ」を作り出した。ここまではわかる。しかしそこから過激集団に変貌してしまった。ある意味軍隊に変わったのだ。結局は俗物からの解放こそが真の自由を得るという信念から、それを世界規模で決めてしまおうとするように自分は思っているのだが、正直雑さを感じる。また主人公の隠された“真実”を知る時、納得はすれど・・・と思う。なんというか、サイコを思い出す。

後半の展開は個人的に「うーん」だが、暴力で自由を得るという発想はなかなか面白かった。ブラッド・ピットの腹筋も割れてたしね。肉体作るの大変やったやろなぁ。あとヘレナ・ボナム・カーターの癖の強さは見ただけでわかる。一瞬で彼女とわかってしまうくせ者オーラはやっぱ一級品。凄い役者ですわ。

全体的には悪くない、実験的な香りのする作品でありました。

asukari-y