劇場公開日 2021年4月30日

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「生易しい評価を超越したありのままの性愛」愛のコリーダ SGさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5生易しい評価を超越したありのままの性愛

2021年7月29日
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ついに観た。
今まで観る機会がなく(観るのが怖かったのかも)、しかし映画好きを名乗るなら絶対観ておきたかった日本映画史上最大級の問題作をとうとう観た。

正直、疲れた。
決して退屈でつまらないからじゃない。
定にアソコをちょん切られた吉蔵と同じく、精魂尽き果てた感じがした。
壮絶なまでの女の情欲、全編にわたる男女の終わりの見えない交わり、次第にエスカレートする危険な性戯。
理解とか共感とか、上品とか下品とか、そんな生易しい評価を超越したありのままの性愛を真っ向から見せつけられ圧倒された。
しかしそこに流れる空気には、不思議とドロドロとした重たさがない。むしろあっけらかんとした明るさすら感じる。
若く盲目的な定の愛欲を受け止める吉蔵の呑気さと底抜けともとれる優しさからだろうか。

芸術か、単なる猥褻かー。
公開当時かなりのセンセーションを巻き起こしたこのハードコア・ポルノは、フランス資本によって製作され、日本に逆輸入された。
アナトール・ドーマンが仕掛人というのがまた凄い。(ヌーヴェルヴァーグの傑作を多く輩出し、のちにブリキの太鼓やヴェンダース作品を手がけた名プロデューサー)
この頃の大島渚は、今のポン・ジュノのように価値の高いアジア人監督だった。

この時代にこれほど大胆な性表現に満ちた作品を撮り、上映にこぎつけた大島渚の覚悟と凄み、そして事務所を辞めてまでこの役に取り組んだ主演の藤竜也と、無名の新人だった松田英子の役者魂に感服する。
何よりも映像は惚れ惚れするほど美しい。

この作品は女性ファンの方が多いらしい。
極限の愛欲のため(狂気だと思うが)、凶行に及んだ定に感情移入するのだろうか。
やはり吉蔵の側に立って観てしまう私は、観終わってヘトヘトに疲れ果て、その理由が分かったような気がした。

SG