劇場公開日 1988年4月16日

「真面目に、100年後の日本史に出る作品です。」となりのトトロ よしさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0真面目に、100年後の日本史に出る作品です。

2020年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

戦後の日本の片田舎。トトロと出会った幼い姉妹の、不思議な体験を描く物語。

老若男女、分け隔てなく楽しめる、日本映画史(アニメ史ではない)に残る名作だと思います。
日本人の郷愁を誘う武蔵野の風景の中、幼い姉妹の不思議な冒険が描かれます。

五月の描かれ方が秀逸です。母親不在の中、母親役を担いながらも絶えず明るく前向きな彼女。その彼女が見せる涙、妹を探し走り回る息遣いが胸に迫ります。
彼女達を見守る大人達も素敵です。特に父親。突拍子もない姉妹の報告を否定せず、肯定的に返していく様子は、全ての大人に見て欲しいシーンです。特に「トトロは本当に居たんだもん」とぐずるメイに、「何時でも会えるわけではないから、会えたことは幸運なんだよ」と返すセンスには脱帽です。

後半、シリアスに転調したシーンの演出も見事でした。不安と恐怖を振り払うように必死に走る五月。その心情を、「BGM」ではなく、彼女の「息遣い」「足音」そして「迫りくる夕暮れ」で描写した演出。
その演出が見事だったからこそ、クライマックスの明るさがより鮮明に浮かび上がります。

声優さんの演技も見事でした。日髙のり子を始めとした声優陣は勿論、父親役を演じた糸井重里、お婆ちゃん役を演じた北林谷栄も秀逸でした。私は、俳優の声優起用に批判的なレビューをすることが良くありますが、このお二人にはノー文句です。

レビューを書いていても、不満な部分を思いつかない、私的評価5が当然の素晴らしい作品でした。

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よし