劇場公開日 1988年4月16日

「日本映画界の宝‼️ 大人にこそ観てほしい至極のアニメ❗️」となりのトトロ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本映画界の宝‼️ 大人にこそ観てほしい至極のアニメ❗️

2020年8月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

泣ける

楽しい

幸せ

田舎町に引っ越してきた姉妹、サツキとメイが体験する不思議ないきものたちとの出会いを、生き生きとしたアニメーションで描くファンタジー映画。

監督/原作/脚本は『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』のアニメ界の伝説、宮崎駿。

子供の頃以来、数十年ぶりに通しで鑑賞した『となりのトトロ』。
子供の頃は別に好きな作品でもなかった。派手なバトルシーンやアクションがなかったからだと思う。
しかし、大人になった今鑑賞してみてビックリ❗️こんなに感動する作品だったとは…😭

草壁一家の越してきた農村は、日本人が想像する「良い田舎」の典型のようなところ。
舞台となる昭和30年代を経験したことはないが、この作品の田舎が美化して描かれていることはわかる。
実際の田舎はこんなにいい所ではないですぜ…

そういう意味ではリアリティのない世界なのだが、何故『トトロ』の世界はまるで現実のようなリアリティを描き出せているんだろう?
それは偏に宮崎駿の圧倒的な「観察力」、「表現力」、そして「想像力」の賜物なんだろう。

宮崎駿には2人の子供がいるが、それはどちらも男の子。
彼の溢れ出る女児愛とは裏腹に、娘を授かることはなかった。
本当に不思議なのだが、実の娘がいないのにも拘らず、なぜあれだけリアリティある女の子の仕草が描けるんだろう?
メイのドタバタとした動きや何気ない言動、立ち姿など、本物の4歳児をそのままアニメに落とし込んだとしか思えない。
「とうもころし」や「おじゃまたくし」といった子供特有の音位転換を何気なく描写しているのは、恐怖すら感じる「観察力」だ。姪っ子も「テレビ」のことを「テビリ」と言っていたっけ。

本物の子供の動きや、何気ない人間の仕草、草木の揺れや時代感すらも自らの内に取り込む「観察力」。
そして、観察により頭の中で構築した世界をアニメーションに落とし込む、宮崎駿の「表現力」。
この2つにおいて古今東西、彼と肩を並べるものが一体何人いるのだろう?
「一流」といわれるアニメーターは世界中に居るだろうが、宮崎駿の才能と能力はそんな言葉では表現しきれない、と改めて実感。

この「観察力」と「表現力」によってもたらされる、リアルからフィクションへの置き換え、いわゆる「異化効果」が与える観客への影響は凄まじい。
子供は野山を駆け回ってキュウリをかじりたくなるだろし、大人は何気ない親子のやり取りや元気に跳ね回る子供達の姿を見るだけで何故か泣けてきてしまう。
全く感動的ではない場面で泣けるアニメこそ、本当に素晴らしいアニメだと自分は思っています。

「異化効果」による感動に加え、宮崎駿の「想像力」によって生み出された「トトロ」や「まっくろくろすけ」、そして「猫バス」という童心をくすぐる可愛らしいキャラクター達。
これらが混じり合えば、実写・アニメ問わず並の作品では太刀打ちできるはずもない。
30年以上にわたり現役で観続けられている作品にはそれなりの理由と力があるんだなぁ。

水木しげるフォロワーの自分が、今回鑑賞して何となく思ったのは、カンタのおばあちゃんのキャラクターが「のんのんばあ」と被るなぁ、ということ。
水木しげる少年に妖怪のことを教えてくれた「のんのんばあ」。
サツキとメイに「まっくろくろすけ」について教えてくれたおばあちゃん。
見た目も何となく似てるし、もしかして宮崎駿は水木しげるを意識して『となりのトトロ』を作ったのかな?
水木しげるの妖怪像とは全く違う妖怪像を見せてやる!的な感じだったりして。

たなかなかなか