劇場公開日 1963年3月1日

「天国から地獄へ!! 製作から60年、いまだにこれを超える刑事ドラマを見た事がない。」天国と地獄 星組さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0天国から地獄へ!! 製作から60年、いまだにこれを超える刑事ドラマを見た事がない。

2023年6月11日
PCから投稿

横浜の高台の一軒家に住む社長宅。

最初から約60分間、ほぼ一度も屋外に出ず誘拐事件のドラマは進行する。そこにあるのは、恐ろしい緊張感と犯人に関する謎。密室での時間経過ではあるが、被害者の地位と周囲の思惑が見える。舞台的であり、飽きない。信じられないくらい上手いと思う。
続いて刑事の捜査が始まる。文字通り足で犯人の姿を追い詰めてゆく。その執念は軽くは感じない。

犯人の姿が初めて映しだれた乗り替わりの上手さにゾクっとした。

衛生状態の良くない場所に住む犯人は、高台に住む社長というだけで憎む。動機はそれだけだ。ただ犯人は苦労して這い上がった社長だとは知らない。天国の生活をしている社長と、うだるような地獄に居る犯人。社長は地獄に堕ちようが犯人の要求をのんだ。

観る人を飽きさせない黒澤明監督の妙が散りばめられていて、自身も映画の制作を楽しんでいる。こちらは、その手に乗せられて時間を忘れて物語に入り込む。

三船敏郎の抑えた演技。
睨みを効かせた演技をする仲代達也。
新人、山崎努の意外な貫禄。
その他、虎視眈々と社長と重役の座を狙う社員。
汗と埃にまみれ捜査をする刑事たち。

驚きの現金受け渡し。
身代金は特注の吉田カバンを使った。
撮影の邪魔になると、家の一部を解体。
様々なきっかけとなる音楽の使い方。
有名な煙突の煙のシーン。
犯人のサングラスに映る風景。

1960年頃の横浜市内、酒匂川あたり、茅ヶ崎海岸、江ノ島、腰越漁港、今も昔も高級住宅地!!開発の始まった頃の腰越住宅、極楽寺あたり、江ノ電などのロケ地を楽しめる。

結果を知っていても何十回も観た。
これからも何十回も観るだろう。

星組